• より良い防災施策をご提案いたします。

横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々さまざまな依頼が舞い込んでくる。

「小松先輩、今日は病院への訪問ですねぇ」
渡辺さんがのんびりと資料を見ながら、隣の小松さんに声をかける。
「病院は、災害時の対応が特に大切だからね。停電や物資不足が命に直結するし、簡単にはいかないよ」
小松さんは真剣な表情で、これから訪問する病院の防災計画書に目を通している。

今回の依頼は、横浜市内の中規模な病院だった。担当者からの事前の話では、防災計画は一応あるものの、数年にわたって更新されていないという。病院内の設備や体制に問題があるかもしれないと感じ、小松さんは緊張感を持っていた。

二人が病院に到着すると、病院の総務課の責任者が出迎えてくれた。
「お待ちしておりました。こちらが現在の防災マニュアルです」
渡されたマニュアルは、確かに古びており、いくつかのページが破れていた。

「更新は…3年前ですね」
小松さんが指摘すると、責任者は苦笑いを浮かべた。
「そうなんです。忙しくて、なかなか見直しができなくて…でも、実際に大きな災害は起きていないので、まあ大丈夫かと」

「それが一番危ないんですよ」
小松さんの声が少し硬くなった。
「病院では、災害時に停電や水の供給が止まったときの備えが最も重要です。それに、患者さんの避難計画や医療機器のバックアップはどうなっていますか?」
責任者はその質問に答えられず、曖昧にうなずくしかなかった。

「では、まず設備を確認させてください」
小松さんは資料を脇に置き、渡辺さんと一緒に病院内を見て回ることにした。

病院の設備を確認する中で、非常電源のテストが不十分であることがすぐにわかった。
「ここ、最後に非常電源の点検をしたのはいつですか?」
小松さんが問いかけると、責任者は再び困った表情を浮かべた。
「それも…3年くらい前ですね」

「これではいけませんねぇ。もしもの時、電力が途絶えたら大変ですよ。特に、手術中の停電なんて考えるだけで怖いです」
渡辺さんが優しくフォローするが、その言葉の裏には深刻な現実が潜んでいた。

さらに進むと、避難経路が一部ふさがれている場所も見つかった。
「ここ、使わなくなった器材が通路をふさいでいますね」
小松さんが指摘する。
「すみません、片付けておきます…」
責任者は急いでメモを取った。

数時間かけて、二人は病院内の問題点を洗い出した。非常電源の点検不足、避難経路の不備、さらには医療スタッフへの訓練が行き届いていないことも明らかになった。

「やっぱり、病院はリスクが多いですねぇ」
病院を出るとき、渡辺さんが感想を漏らした。
「でも、指摘することで、少しでも安全になるなら、それが私たちの仕事だからね」
小松さんはそう言いながらも、病院の将来に少し不安を抱いていた。

こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。