残念な防災図鑑　８

横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々さまざまな依頼が舞い込んでくる。

「小松先輩、今日はスポーツジムからの依頼ですねぇ」
渡辺さんが少し驚いたように言う。
「スポーツジムか。広い施設だし、運動器具も多いから、防災対策は大変そうだね」
小松さんは資料を見つめながら頷いた。

今回の依頼は、横浜市内のスポーツジム。ジムのマネージャーが、地震や火災時に器具が倒れたり、避難ルートが確保できるか心配だという相談だった。

ジムに到着すると、広々としたフロアにはランニングマシンやバーベル、ダンベルなど、さまざまな運動器具が所狭しと並んでいた。マネージャーが出迎えてくれ、早速案内が始まった。

「こちらがフリーウェイトエリアです。大きな地震が来たら、器具が転倒しないか心配で…」
マネージャーは困った顔をして話す。確かに、重量のあるバーベルやダンベルが転がったら危険だ。
「フリーウェイトエリアは特に注意が必要ですね。器具が動かないように、専用の固定具を使うことを検討しましょう」
小松さんが冷静に提案する。

「そうですねぇ。器具が転がると怪我にも繋がりますからねぇ」
渡辺さんが柔らかい声で補足する。ジムのスタッフも真剣に聞いている。

次に、二人はトレーニングマシンエリアをチェックする。ランニングマシンやサイクリングマシンが並んでいるが、それらが倒れないように対策が必要だ。
「このマシンも大きいですけど、しっかり固定されているんですか？」
小松さんが確認すると、マネージャーは「いや、特に対策はしていないんです」と答えた。

「このエリアの器具も、地震が来たら大きな揺れで倒れる可能性があります。固定具を使って安全性を高めるのがいいですね」
小松さんは具体的な対策を提案し、マネージャーは早速それを検討すると答えた。

また、非常口の位置も確認したが、そこには器具や清掃用具が置かれていた。
「非常口の前には何も置かないようにしてください。避難経路が確保されていないと、大勢の利用者がパニックになりますから」
小松さんが指摘すると、マネージャーはすぐに片付けるよう指示を出した。

「スポーツジムは利用者が常に動き回っているから、災害時にはスムーズな避難が大切ですねぇ」
渡辺さんが優しくフォローすると、スタッフも一斉に頷いていた。

仕事を終えて、二人はジムを後にする。
「運動器具が多い場所では、特に防災対策を徹底しないといけないですねぇ」
渡辺さんが感心しながら言う。
「そうだね。安全を確保しながら、快適な環境を作ることが大切だよ」
小松さんは笑顔で答えた。

こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。