残念な防災図鑑　１０

横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々さまざまな依頼が舞い込んでくる。

「小松先輩、今日の依頼はカフェからですねぇ」
渡辺さんが穏やかに資料を確認しながら言う。
「カフェか…お客さんが多い時間帯だと、避難はパニックになりがちだから、きちんと見ておかないとね」
小松さんは腕を組んで考え込む。

今回の依頼は、横浜市内の人気カフェから。火災が発生した際に、スムーズに避難できるか、またキッチン内の防災対策が適切かどうかが問題だった。

二人はカフェに到着すると、店内は温かく落ち着いた雰囲気。おしゃれなインテリアが並び、たくさんの客がコーヒーを楽しんでいた。オーナーが迎えてくれ、早速店内の状況を確認することになった。

「このカフェはオープンキッチンなので、火が見えるんです。おしゃれなんですけど、火災が起きたらどう対処すればいいか心配で…」
オーナーが心配そうに話す。
「確かに、オープンキッチンだと火災のリスクが高いですね。まずは消火器がすぐ手に届く位置にあることを確認しましょう」
小松さんがキッチンを見回し、消火器の設置場所を指摘した。

「あと、キッチンで使っているコンロやオーブンには、火災時に自動でガスを止める装置が付いていると安心ですねぇ」
渡辺さんが優しい口調で付け加える。オーナーはその装置をすぐに導入すると言っていた。

次に、二人はカフェの客席エリアを見て回る。テーブルや椅子が密集していて、通路も狭く、非常口が見えにくい。
「非常口はもっと目立つように表示する必要がありますね。このままだと、いざという時に誰も気づかずパニックになります」
小松さんが真剣にアドバイスする。

「そうですねぇ、お客さんは日常的に使っていない非常口を忘れがちですからねぇ」
渡辺さんがフォローすると、オーナーもすぐに改善する意思を示した。

最後に、店の奥にある非常階段を確認すると、そこには古い段ボールや掃除道具が積まれていた。
「これでは避難できませんね。非常階段はいつでも使える状態に保ってください」
小松さんがきっぱりと言うと、オーナーは少し慌てて片付けを始めた。

「カフェのような場所では、ちょっとした火災でもすぐに大事になりますから、日常的な管理が重要ですねぇ」
渡辺さんの落ち着いた声に、オーナーも真剣な表情で聞き入っていた。

「防災対策は、準備していれば安心できます。これからも安全第一で、おしゃれなカフェを続けてくださいね」
小松さんが微笑んで言うと、オーナーも感謝の笑顔を返した。

仕事を終えて、二人はカフェを後にする。
「カフェは空間がおしゃれでも、防災が疎かだと危険ですねぇ」
渡辺さんがつぶやくように言う。
「そうだね。おしゃれと安全は両立できるんだから、しっかり対策していかないと」
小松さんは頷きながら歩き出した。

こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。