横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々さまざまな依頼が舞い込んでくる。
「小松先輩、今回は、古い商業ビルのオーナーからの依頼ですねぇ」
渡辺さんが穏やかに資料をめくりながら話しかける。
「古いビルか…耐震性や避難経路がちゃんとしてるかどうか、しっかりチェックしないとね」
小松さんは眉をひそめながら、すでに頭の中で問題点を思い浮かべていた。
依頼先は、横浜市内にある築40年の商業ビル。地震が発生した際に倒壊の危険性や、避難経路の安全性について相談が来ていた。
ビルのオーナーは高齢の男性で、ビルの耐震基準が古いため、建物全体に不安を抱いているとのことだった。
「このビルは昔からの商店がいくつか入っていて、なかなか大規模な改修工事ができないんですよ」
オーナーは少し困った様子で説明する。
「まずは、耐震補強についての助言が必要ですね。あと、避難経路も見ておきましょう。古いビルだと避難ルートが狭いことが多いですから」
小松さんはすぐに現場の確認を始めた。
エレベーターは古びており、万一の地震で停止した場合、どうやって避難させるかが課題だった。
「地震の際にはエレベーターは使用できませんので、非常階段が命綱になりますね。ですが、ここの階段は狭くて、荷物が置かれています」
渡辺さんが柔らかく指摘すると、オーナーはハッと気づいていた。
「階段に物を置いてしまうと、緊急時に逃げられなくなりますから、ここは最優先で片付けていただきたいですね」
小松さんが冷静に言うと、オーナーも納得した様子で頷く。
次に二人はビルの屋上に上がり、外壁や避難場所の確認をした。屋上は避難スペースとして使えるはずだが、そこには植木鉢や様々な物が散らばっていた。
「屋上を避難場所として使う場合は、できるだけスペースを確保し、物を置かないようにしてください。避難者が増えると、物が邪魔になりますから」
小松さんは真剣にアドバイスを送る。
「あと、このビルの耐震性能が心配なので、専門家に相談して補強工事を検討してみるのも手ですねぇ」
渡辺さんが優しく補足すると、オーナーも改めてビルの安全性を見直すことを決意した。
「防災対策はお金と手間がかかるんですが、それが命を守るための最善策ですからね」
小松さんが最後に力強く話すと、オーナーは深く感謝の意を示した。
二人はビルを後にし、次の現場に向かう。
「古いビルは改修が難しいですけど、少しずつでも改善することが大事ですねぇ」
渡辺さんが静かに言うと、小松さんは頷いた。
「どんな小さな改善でも、積み重ねが命を守る。やりがいがあるよね」
小松さんは満足げに微笑んだ。
こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。