横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々さまざまな依頼が舞い込んでくる。
「小松先輩、今回は小学校からの依頼ですって」
渡辺さんが、ふんわりとした声で資料を見ながら話す。
「学校か…子供たちがたくさんいるから、避難誘導が大事だね。それに耐震性も確認しないと」
小松さんは、これまでの経験から、学校現場の防災対策が課題になることを予感していた。
今回の依頼は、横浜市内にある公立小学校から。数年前に建てられた新しい校舎だが、近年地震が多発しているため、防災対策の見直しを希望していた。
「校舎は新しいから、一見問題ないように見えるんですが、避難訓練の時に混乱が起きてしまいまして」
校長先生は頭をかきながら困った顔をしている。
「まずは避難ルートを確認して、子供たちが安全に避難できるかどうか見ましょう」
小松さんは校内を歩き始め、避難経路や教室の安全性を確認していく。
「この学校は、廊下が広くて避難しやすいですねぇ。でも、避難訓練の際に先生たちがパニックになることもあるんですよね」
渡辺さんが、優しい口調で指摘する。
避難ルート自体は問題なさそうだが、避難訓練が十分に機能していないことが原因のようだ。
「避難訓練は繰り返し行うことで、みんなの動きがスムーズになりますよ。先生たちにも事前にしっかり役割を伝えておくと良いですね」
小松さんは的確なアドバイスをする。
「あと、校内の掲示板や掲示物が多いので、これらが倒れてくるリスクもありますね。地震の時に安全に逃げられるように、掲示物の固定を見直した方がいいですよ」
渡辺さんが穏やかに付け加えると、校長先生も納得した表情を浮かべた。
次に二人は、体育館に向かった。避難場所として使用されるこの空間は、子供たちが一時的に集まる場所だ。
「体育館は天井の照明が落ちてくるリスクがありますね。定期的に点検して、照明の耐震性能を確認しておくことが大事です」
小松さんは、天井を見上げながら言う。
「避難場所として使うには、人数に応じたスペース確保も必要ですねぇ。過密になると、かえって危険ですし」
渡辺さんが補足すると、校長先生もそれを踏まえて避難計画の見直しを進めることに決めた。
最後に、二人は学校全体の防災用品の確認を行った。防災倉庫には、飲料水や非常食がしっかりと備えられていたが、備蓄量が少ないことに気づいた。
「子供たちが多いので、もう少し備蓄を増やした方が安心ですね。特に飲料水は多めに用意しておくといいです」
小松さんがアドバイスすると、校長先生はメモを取りながら真剣に聞いていた。
「防災用品の点検は定期的に行って、期限切れがないかも確認しましょう。いざという時に備えて、少しの余裕を持つことが大事ですからねぇ」
渡辺さんの落ち着いた声が、校長先生に安心感を与えたようだった。
こうして、学校での防災対策の見直しが完了した。二人は学校を後にしながら、再び次の依頼に向かう準備を始めた。
「学校はたくさんの命を預かる場所ですから、しっかりした対策が必要ですねぇ」
渡辺さんが優しく話すと、小松さんは頷きながら答えた。
「子供たちを守るためには、大人がまず冷静に動けることが大事だよね。これで、安心して学べる場所になるはずだ」
小松さんはそう言って、満足げに笑った。
こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。