残念な防災図鑑　１３

横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々さまざまな依頼が舞い込んでくる。

「小松先輩、今回は商店街全体の防災対策の見直しをお願いされましたねぇ」
渡辺さんが、手元の資料を確認しながらゆったりと語りかける。
「商店街か…人通りが多い分、災害時のパニックが怖いね。各店舗の避難経路や、物資の備蓄状況も見ないと」
小松さんは、もう頭の中で問題を整理し始めていた。

今回の依頼は、横浜市内にある地域密着型の商店街から。老舗の店が多く、災害時の対策が整っているかどうか不安を抱いていたのだという。

二人が商店街に到着すると、商店街の代表が出迎えてくれた。
「私たちの商店街は昔からのお店が多く、災害時にどう対策すればいいか、ちょっと心配でしてね」
代表は少し心配そうに話す。

「まずは、各店舗の避難経路を確認しましょう。万が一、地震が起きた場合、お客様の避難誘導がうまくできるかどうかが重要ですから」
小松さんはすぐに商店街の各店舗を回り、避難経路や安全対策をチェックし始めた。

最初に訪れた店は古い時計店。狭い店内に商品がぎっしりと並んでいる。
「この棚は固定されていますか？」
小松さんが真剣な表情で尋ねると、店主は首を横に振った。
「いえ、特に固定してないんです。棚が倒れたら大変だなとは思ってましたけど…」
店主は少し困惑した顔をしていた。

「棚を固定するだけで、商品もお客様も守れますよ。耐震用の固定具を使えば、揺れが来ても安心です」
小松さんがアドバイスすると、店主は納得したようにうなずいた。

次に二人は、食品を扱う店舗を訪れた。ここでも、商品が陳列棚にたくさん並んでいたが、避難経路が狭くなっていた。
「商品が落ちてしまうリスクが高いですね。特にこの通路が狭いので、避難時に危険です」
渡辺さんが柔らかく指摘すると、店主は少し焦った表情を浮かべた。

「商品が落ちないように棚にストッパーをつけるのと、避難経路を確保するために、通路に余裕を持たせるのが良いですね」
小松さんがすぐに解決策を提案し、店主もその場で対策を始める決意を固めた。

最後に、二人は商店街全体の防災計画を確認した。商店街の広場には、非常用の物資が少しだけ備えられていたが、その量では心許なかった。
「この広場を避難場所として使うのであれば、もう少し物資の備蓄量を増やした方が良いですね。特に水と非常食が足りません」
小松さんが的確に指摘すると、商店街代表は感謝の意を示しながらメモを取っていた。

「非常用の電源もあると、災害時には役立ちますよ。停電が長引くこともありますし、情報収集にも影響しますからねぇ」
渡辺さんが優しくアドバイスをすると、商店街全体での防災対策の強化が決まった。

こうして、商店街での防災対策が少しずつ進んでいく。二人は次の現場へ向かいながら、安心できる街づくりに貢献していることを感じていた。
「商店街は多くの人が集まる場所だから、しっかりとした対策が重要ですねぇ」
渡辺さんがゆったりと話すと、小松さんも頷きながら答えた。
「一つの店舗が対策を強化することで、全体の安心感が変わるよね。これで少しずつ改善されていくはず」
小松さんは笑顔で語った。

こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。