残念な防災図鑑　１５

横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々さまざまな依頼が舞い込んでくる。

「次の現場は工場ですよ、小松先輩」
渡辺さんが、ゆったりとした口調で報告してきた。
「工場か…。特に火災対策が重要だな」
小松さんはすぐに、工場の特徴を頭に浮かべた。工場は危険物や重機が多く、火災が起きたら甚大な被害をもたらす可能性がある。

二人が派遣されたのは、横浜市郊外にある中規模の食品加工工場。粉体原料が多く扱われており、火災や爆発のリスクが高い場所だ。

「お忙しい中、お越しいただきありがとうございます。最近、工場内での防災対策について問題が浮上しまして…」
工場長は、疲れた表情で二人を迎えた。

「まずは、現場を見せてもらえますか？」
小松さんが率直に聞くと、工場長はうなずき、案内を始めた。工場内に足を踏み入れると、粉塵が漂う中、働くスタッフたちが黙々と作業をしていた。

「ここが問題の箇所です」
工場長が指し示したのは、粉体原料を扱うエリア。大量の粉が舞い上がっていて、火気厳禁の表示がいくつか掲げられていた。
「粉塵爆発のリスクは高いですね。この状況で火花が飛んだら、すぐに引火する可能性がある」
小松さんが厳しい口調で指摘すると、工場長はうなだれた。
「火災報知器は正常に動いていますか？」
「一応、点検はしていますが…心配ですね」

「火災報知器が設置されている場所を見て回りましょう。粉塵の多い場所には、特に敏感なセンサーが必要ですし、避難経路も確認します」
小松さんは、すぐに行動を開始した。

「小松先輩、こちらの消火器ですが…かなり古いもののようですねぇ」
渡辺さんが、壁際に設置された古びた消火器を指差して言う。
「消火器も定期的に交換する必要があります。古いものだと、いざという時に作動しないことがありますよ」
小松さんが工場長に警告すると、彼は驚いた表情で「すぐに交換します」と約束した。

次に二人は、避難経路をチェックするために工場全体を見回った。大きな機械や荷物が通路をふさぐ箇所がいくつか見つかった。
「これでは、火災時に迅速に避難できませんねぇ。荷物を整理して、避難経路を確保することが大事です」
渡辺さんの穏やかな口調に、工場のスタッフたちもすぐに荷物を片付け始めた。

「あと、火災訓練はどのくらいの頻度で行っていますか？」
小松さんが確認すると、工場長は「最近は忙しくて、訓練ができていないんです」と申し訳なさそうに答えた。
「訓練は定期的に行わないと意味がありませんよ。火災時にはパニックになりがちなので、訓練で冷静に対応できるようにしておかないと」
小松さんのアドバイスに、工場長は真剣な表情でうなずいた。

こうして二人は、工場の防災対策をしっかりと見直し、改善点を工場長とスタッフに伝えた。
「粉塵の扱いに注意するだけで、爆発のリスクは大きく減りますよ。定期的な点検と訓練で、安全な作業環境を作りましょう」
小松さんの言葉に、工場のスタッフたちは一致団結して改善に取り組む姿勢を見せた。

「工場の火災対策は、特に重要ですねぇ。みんなで協力しないと…」
渡辺さんがほわっとした口調でつぶやくと、小松さんも静かにうなずいた。
「うん、安全を守るためには、全員の意識が必要だ。これで、少しは安心できるはずだね」

こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。