彼の名は小松五郎、フリーの防災コンサルタントである。五郎は防災について独自の哲学を持ち、その哲学を求めて一人歩き続ける。
今日は、ある中学校からの依頼だ。校長先生が生徒たちの防災意識を高めたいということで、五郎に協力を求めてきた。学校という場は、多くの生徒や教職員が一度に避難するため、迅速な対応が求められる。五郎は学校防災において最も重要なポイントを生徒たちに伝えるため、校門をくぐった。
「小松さん、今日はお越しいただきありがとうございます」と校長が迎えてくれた。「実は、最近地震が多くなってきたので、生徒たちにもう一度防災の重要性を教えたいと思い、お願いしました」
「こちらこそ、呼んでいただきありがとうございます。学校は多くの人が集まる場所ですから、対策がしっかりしていれば安心ですね」と五郎は微笑んだ。
講堂に案内された五郎は、目の前に集まった生徒たちに話しかけた。「皆さん、今日は防災について一緒に考えましょう。学校での避難訓練は、ただやるだけでなく、なぜやるのかをしっかり理解することが大切です」
生徒たちは静かに耳を傾けている。五郎は、まず基本的な地震対策から説明を始めた。「地震が起きたら、まずは身の安全を確保することが最優先です。机の下に隠れて、頭を守りましょう。揺れが収まったら、先生の指示に従って避難しますが、慌てずに整然と行動することが大切です」
生徒たちは頷きながら、真剣に聞いている。五郎は続けた。「そして、避難するときに気をつけるのは、押さない、走らない、しゃべらない、戻らない。この四つを守ることです。特に、大勢で避難するときには、落ち着いて行動しないと混乱が起きます」
次に、五郎は実際の避難ルートについて説明した。「避難ルートは日頃から確認しておくことが大事です。非常口がどこにあるのか、また、避難先での集合場所はどこかを常に意識しておきましょう。地震や火災の際には、普段通りの道が使えないこともあります。その時のために、複数の避難経路を知っておくことが大切です」
「では、皆さんに質問です。もし地震が起きて、普段使う階段が使えなかったらどうしますか?」と問いかけると、数人の生徒が手を挙げた。「ほかの階段や出口を探して、避難します」と一人の生徒が答える。
「その通りです。だからこそ、普段からさまざまなルートを知っておく必要がありますね。次に、火災の場合についても考えてみましょう。煙が充満したら、どうやって避難すればいいでしょうか?」
別の生徒が手を挙げて答えた。「低い姿勢で、煙を吸わないようにします」
「いいですね。煙があるときは、できるだけ下を通ることが安全です。そして、常にハンカチなどで口を覆って煙を吸い込まないようにしましょう」
五郎は最後に、家庭でもできる防災対策について話した。「防災は学校だけでなく、家庭でも準備をしておくことが大切です。非常食や水を備えておくこと、家族で避難場所を確認しておくこと、これらは皆さん自身が家で話し合ってください」
講義が終わると、校長が「ありがとうございました。生徒たちも防災の意識をしっかり持てたと思います」と感謝の言葉を述べた。
五郎は校庭を後にしながら、静かに思った。「子供たちの未来を守るために、今から防災を考える。それが何よりも大切だ」
孤独な防災の道は、今日も続いていく。