横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々さまざまな依頼が舞い込んでくる。
「小松先輩、今日は…なんと、アパレルショップからの依頼です」
渡辺さんがのんびりとした口調で言いながら、依頼書を差し出した。
「アパレルショップか。ファッションは見栄え重視のイメージだけど、防災にはしっかり取り組んでるかな」
小松さんは少し不安げに書類を眺めた。
現場のアパレルショップに到着すると、華やかなディスプレイが出迎えてくれた。店内には最新のファッションアイテムが並び、スタッフたちもおしゃれな装いだ。しかし、ふと周りを見渡すと、避難経路や安全対策にはいくつかの問題が浮かび上がった。
「お忙しいところありがとうございます。実は、防災のこと、あまり考えられていなくて…何をどうすればいいのか分からないんです」
店長が苦笑いしながら説明した。
「それでは、早速見て回りましょうか」
小松さんは、渡辺さんとともに店内のチェックを開始した。
まず目に留まったのは、ディスプレイのマネキンが避難通路に配置されていることだ。
「このマネキンたち、少し場所が悪いですね。緊急時には、ここが避難通路になるので、すぐに撤去できるようにしないと危険です」
小松さんが指摘すると、店長は驚いた表情でうなずいた。
「確かに…でも、店内が狭いので、どうしてもここに置かざるを得ないんです」
「それなら、キャスター付きの台を使って、緊急時にすぐ動かせるようにするのはどうですか?」
渡辺さんが柔らかい口調で提案した。
「それはいいアイデアですね。すぐに試してみます!」
店長は嬉しそうにメモを取った。
次に、店の奥にあるストックルームに移動した。洋服や小物が詰め込まれており、物理的には狭いスペースで作業が行われているようだ。しかし、その狭さゆえに、万が一の時に避難が遅れるリスクが高い。
「このストックルームも避難経路に直結していますね。棚の配置を工夫して、通路が確保されるようにしておく必要があります」
小松さんが指摘し、店長は再びメモを取り始めた。
「ところで、避難訓練は行っていますか?」
渡辺さんが軽い調子で尋ねると、店長は少し戸惑いながら答えた。
「実はまだやっていないんです。お客様をどう誘導すればいいのか、自信がなくて…」
「避難誘導は簡単ではありませんが、まずはスタッフ全員で訓練して、緊急時に冷静に対応できるようにすることが大切です」
小松さんが店長にしっかりと助言すると、彼は深くうなずいた。
「あと、防災グッズの準備はどうなっていますか?」
「少しは準備していますが、従業員用だけです。お客様用のものまでは考えていなくて…」
「もし災害が発生した場合、お客様も店内に避難する可能性があります。お客様用の防災グッズも備えておくことをお勧めします」
小松さんが強調すると、店長は再度感謝の意を述べた。
こうして、小松さんと渡辺さんは、アパレルショップの防災対策を見直し、店内をより安全な環境にするためのアドバイスを提供した。
「おしゃれな店も、いざという時には安全第一ですからね」
小松さんが軽く笑いながら言うと、渡辺さんもほほ笑んで応じた。
「ファッションも大事だけど、安全を守ることが一番大切ですよね」
渡辺さんの優しい言葉に、小松さんは「その通り」と満足げにうなずいた。
こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。