孤独の防災　１２

彼の名は小松五郎、フリーの防災コンサルタントである。五郎は防災について独自の哲学を持ち、その哲学を求めて一人歩き続ける。

今日、五郎は小さな商店街に足を運んだ。商店街の会長、松本さんからの依頼で、防災対策を見直すというものだった。この商店街は古くから続いており、地域の人々に親しまれているが、店舗は狭く、避難や防火対策があまり取られていないという。

「商店街は多くの人が集まる場所だ。特に観光客や買い物客が多い場合、災害時の混乱を防ぐには、徹底した準備が必要だな」と五郎は思いながら、商店街の入口に到着した。

松本さんが笑顔で迎えてくれた。「小松さん、来てくれてありがとう。うちの商店街は小さくて古いんですが、やはり防災をしっかりしなければいけないと思って。特に、地震や火事が心配なんです」

「商店街は狭い通路や多くの人が行き交う場所ですから、まずは避難経路の確保と火災対策が重要です」と五郎は言いながら、商店街の通路を見回した。

まず気になったのは、細い路地に溢れた商品や什器（じゅうき）。「まず、これらの路地に置かれている商品や棚は、非常時には大きな障害になります。避難経路は常に確保しておくべきです。特に、地震や火災時には人々が一斉に移動するので、通路を広く保つことが大切です」と五郎は指摘した。

松本さんは神妙な顔をして頷き、「商品が多いのは、狭い店舗だから仕方ないと思ってましたが、やはり見直さないといけませんね」と答えた。

「そして、火災対策ですが、消火器の位置を全員が把握しておくことが重要です。さらに、商店街全体で消火訓練を行い、火災が発生したときにどう対応するか、統一したマニュアルを作成することをお勧めします」と五郎は続けた。

「確かに消火器の位置や使い方、全然知らない人もいますね。商店街全体で訓練をしておくのは良いアイデアです」と松本さんは感心した様子だった。

さらに、五郎は防災備蓄についてもアドバイスした。「商店街には多くの人が集まりますが、災害時にここに避難することも考えられます。そのため、各店舗で最低限の備蓄を持っておくことも必要です。非常食や水、簡易トイレなど、共用で使えるものを準備しておくと、いざというときに役立ちます」

松本さんは真剣な表情で、「商店街にそんな備蓄が必要だとは思いませんでしたが、確かに万が一のときには助かりますね。すぐに対策を始めます」とメモを取りながら答えた。

最後に、五郎は「災害が発生したとき、何よりも大切なのはコミュニケーションです。商店街全体で連絡網を整備し、災害時に互いの状況を確認できるようにしておきましょう。特に商店街の会長や代表者が中心となり、各店舗に情報を素早く伝える体制を作ることが大事です」と強調した。

「その通りですね。商店街全体で一つになって防災に取り組めば、災害が起きても安心感が増します」と松本さんは自信を持って話した。

五郎は商店街を後にし、夕暮れの街並みを歩きながら考えた。「古い場所でも、意識さえ変えれば未来を守れる。商店街の力は、地域全体を支える力になる」

孤独な防災の道は、今日も続いていく。