彼の名は小松五郎、フリーの防災コンサルタントである。五郎は防災について独自の哲学を持ち、その哲学を求めて一人歩き続ける。
今日は、郊外にある町内会からの依頼だ。古い住宅地で、自治会長の田中さんが防災計画を見直すために五郎を呼んだ。特に、高齢者が多く住んでいる地域で、地震や火災が発生した際にどのように避難すればいいのかを心配しているとのことだった。
「高齢者が多い地域か…避難や救助が遅れがちになるだろうな」と五郎は考えながら、閑静な住宅街に足を運んだ。
田中会長が出迎え、すぐに町内会の集会場に案内された。集会場には、近隣住民が集まっており、そのほとんどが高齢者だ。彼らは五郎の到着を心待ちにしていた。
「小松さん、この町内は昔からの住民が多くて、年々高齢化が進んでいます。私たちは皆、災害時にどう対処すれば良いのか不安で…」と田中会長は不安げに話し始めた。
「高齢者が多い地域では、災害時の避難は確かに大きな課題です。まず、避難の優先順位を決め、どのように助け合うかを計画することが重要です」と五郎は落ち着いて答えた。
まず、五郎は町内の避難所の位置を確認し、どれだけの人が安全にそこまで移動できるかを検討した。避難所までは距離があるため、徒歩での移動が難しい高齢者も多いようだ。
「まずは、避難所までの経路を短縮できるよう、地域内の安全な場所を確認し、一次避難場所を設定しましょう。すぐに移動できる場所があれば、高齢者や体力のない方も無理なく避難できるはずです」と五郎は提案した。
田中会長は「なるほど、それなら近くの公園や集会場も使えるかもしれませんね」と納得した様子だった。
次に、五郎は「避難経路に障害物がないことも大切です。特に住宅地では、ブロック塀や狭い路地が多いと倒壊のリスクがあります。地域全体で確認し、危険な場所を共有しましょう」とアドバイスを続けた。
「確かに、古いブロック塀が多くあります。すぐに対策を検討します」と田中会長は真剣な表情で答えた。
さらに、五郎は「災害時、特に高齢者や要介護者をどう助けるかが大切です。地域内で助け合いの体制を整え、近隣の住民が互いに助け合えるようにしておくことが必要です」と力を込めて話した。
「お互いに助け合う…確かに、それが一番大切かもしれませんね。普段から交流を深めておけば、いざという時にも安心ですね」と住民たちも頷いた。
最後に、五郎は「防災訓練を定期的に行うことで、実際の災害時にどう動けばいいかが身に付きます。特に避難の手順を高齢者向けにアレンジし、無理のない形で実施していきましょう」とまとめた。
「その通りですね。年に一度の訓練では足りないかもしれません。もっと頻繁に訓練を行って、みんなが安心して避難できるようにします」と田中会長は決意を新たにした。
五郎は住宅地を後にし、静かな住宅街を歩きながら考えた。「人々の助け合いがあれば、どんな災害にも立ち向かえる。地域の絆こそが最大の防災力だ」
孤独な防災の旅路は、今日も続いていく。