横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々様々な依頼が舞い込んでくる。
「小松先輩、次はオフィスビルからの依頼ですよ」
渡辺さんが、少し驚いたような表情で資料を確認している。
「オフィスビルか…たくさんの人が働く場所だから、避難経路や地震対策がしっかりしているかが重要ね」
小松さんは、すぐに思考を巡らせながら返答した。
今回の依頼は、横浜市内にある中規模のオフィスビルから。災害時にスムーズに避難できるか、またビル全体の防災対策が万全かどうかをチェックしてほしいとのことだ。
ビルに到着すると、管理責任者が出迎えてくれた。
「最近、地震や台風が多いので、改めて防災を見直したいと思いまして。実際に訓練もできていなくて、不安があって…」
彼は少し疲れた様子で話し始めた。
「まずは、避難経路と防災設備を確認させていただけますか?」
小松さんは、早速ビルの中を見回りながらチェックを始めた。
最初に目に留まったのは、避難階段の状態だった。段ボールや掃除用具が階段に置かれており、避難時には障害物となりそうだった。
「この階段は避難経路ですので、物を置かないようにしてください。緊急時には、ここが命を守るための通路ですから」
小松さんの言葉に、管理責任者は焦った表情を浮かべながら、すぐに片付けることを約束した。
次に、消火器や防火シャッターの点検を確認した。消火器は適切な場所に設置されていたが、点検ステッカーを見ると、定期点検が遅れているものがいくつかあった。
「消火器の点検は、定期的に行わないと、いざという時に使えなくなってしまいます。点検スケジュールをきちんと守ることが重要です」
小松さんの指摘に、管理責任者は真剣な表情でメモを取っていた。
また、オフィス内の家具の配置も問題が見つかった。多くのオフィスデスクや棚が固定されておらず、地震が起きた際に倒れる危険性が高かった。
「このデスクや棚、地震が起きたら倒れてしまいますね。固定具を使って安全に固定することを強くお勧めします」
渡辺さんが、ゆったりとした口調で説明すると、管理責任者は「確かに、固定していませんでした…すぐに対応します」と答えた。
最後に、ビル全体での避難訓練について確認した。
「避難訓練は行っていますか?」
小松さんが尋ねると、管理責任者は恥ずかしそうに答えた。
「実は、最近は忙しくてできていなくて…」
「避難訓練は、万が一のときに皆さんが冷静に対応できるようにするための準備です。定期的に行うことで、訓練で学んだことが自然に体に染み込みます」
小松さんのアドバイスに、管理責任者はすぐに避難訓練を計画することを決意した。
「オフィスビルでは、働く人の安全を守るために、日常の点検や訓練が不可欠ですねぇ」
渡辺さんが穏やかに話すと、小松さんも「その通り」と静かにうなずいた。
こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。