• より良い防災施策をご提案いたします。

彼の名は小松五郎、フリーの防災コンサルタントである。五郎は防災について独自の哲学を持ち、その哲学を求めて一人歩き続ける。

今日、五郎はオフィスビルに足を運んだ。依頼主は、中規模のIT企業だ。急成長したこの会社は、災害対策が後回しになっているようで、社員数が増える中で、オフィスの防災対策が求められているとのことだった。

ビルの入り口で迎えてくれたのは、総務課の責任者である佐藤さん。「実は、昨年の地震で一部の社員がケガをしてしまって…それで防災にもっと力を入れる必要があると気づきました」と、佐藤さんは開口一番、申し訳なさそうに話した。

「急成長する企業ほど、災害対策が後手に回ることが多いですね」と五郎は淡々と応じながら、社内を見回した。最新の機器が並び、オフィスは洗練されているが、社員たちは皆、自分の業務に集中しており、災害への意識はあまり感じられない。

まず五郎が気になったのは、避難経路がデスクや機器で塞がれていることだった。「社員数が増えたのは良いことですが、この状態では非常時に素早く避難するのが難しいです。まずは、避難経路の確保を徹底しましょう」と五郎は指摘した。

「確かに…最近はスペースが足りなくて、物を通路に置くことが増えてしまっていました。すぐに改善します」と佐藤さんは反省の色を見せた。

次に、五郎は非常時の連絡手段について質問した。「災害が発生した際、社員間でどうやって連絡を取り合いますか?」

佐藤さんは「うちはチャットツールを使ってますが、停電や通信障害があった場合には…」と答えに詰まった。

「通信障害が起きる可能性は常に考慮すべきです。そのため、物理的な掲示板やアナログな連絡手段を併用することが大切です。また、誰がリーダーシップを取るかを事前に決めておくことで、混乱を防げます」と五郎はアドバイスをした。

「なるほど、確かに非常時にはデジタルに頼りすぎるのは危険ですね。社内に防災掲示板を設置し、連絡網を整備します」と佐藤さんは頷いた。

さらに五郎は、オフィスの耐震性や家具の固定状況を確認した。「このエリアでは比較的強い地震が起こる可能性があります。家具や棚の固定が不十分だと、揺れで倒れてしまい、社員がケガをする恐れがあります。特に大型モニターやサーバーラックはしっかり固定しましょう」

「確かに、昨年の地震でもサーバーラックが倒れて大変なことになりました。もっと早く対策をしておけば良かったです」と佐藤さんは悔しそうに言った。

最後に五郎は、防災訓練の重要性を強調した。「いくら計画を立てても、実際に行動できなければ意味がありません。定期的に避難訓練を行い、社員全員が災害時の手順を理解することが不可欠です」

「わかりました、すぐに防災訓練を企画します。社員が安心して働ける環境を作りたいです」と佐藤さんは決意を新たにした。

五郎はオフィスビルを後にしながら考えた。「企業は成長とともに災害リスクも大きくなる。防災が後回しにならないように、意識を高めていくことが重要だ」

孤独な防災の旅は、今日も続いていく。