横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々様々な依頼が舞い込んでくる。
「小松先輩、今日はカフェからの依頼ですよ」
渡辺さんが、ほんの少し嬉しそうに言った。
「カフェか。おしゃれな空間って防災意識が少し低いことが多いんだよね。お客さんの安全を守るためには、見た目よりも大事なことがあるのに」
小松さんは、すでに想像しながら答えた。
二人が向かったのは、横浜市内でも人気のあるカフェ。
広いガラス張りの窓と、落ち着いたインテリアが特徴的で、リラックスできる雰囲気が漂っていた。
「こんにちは。今日は防災のこと、いろいろと教えていただきたいと思いまして」
店長はにこやかな笑顔で二人を出迎えたが、店内にはいくつかの問題が見え隠れしていた。
「店内、すごくおしゃれですねぇ。でも…あちこちに飾り物が多いですねぇ」
渡辺さんが、穏やかな声で周囲を見回した。
「確かに。地震が来たら、これらが落ちてきたら危ないね。お客さんに怪我をさせてしまう可能性もあるよ」
小松さんが冷静に指摘した。
「えっ、そうですか?おしゃれを優先しちゃって、そこまでは考えていませんでした」
店長は少し驚いた顔をした。
「おしゃれと安全、両方を両立させる方法もあります。飾り物を少し整理して、固定できるものはきちんと固定することで、見た目も損なわずに安全にできますよ」
小松さんが説明すると、店長はほっとした様子でうなずいた。
「あと、ガラス張りの窓が大きいですが、地震の際にガラスが割れたら大変ですよねぇ」
渡辺さんが心配そうに窓を見つめる。
「飛散防止フィルムを貼ると安心ですよ。ガラスが割れても、破片が飛び散るのを防げますから」
小松さんが続けてアドバイスすると、店長は「そうですね、すぐにやります!」と前向きに答えた。
次に二人は、店の奥にあるキッチンをチェックした。火気を使う場所が多く、火災のリスクが高いことが気になった。
「ここは特に火災に気をつけないといけない場所ですね。消火器はどこに置いてありますか?」
小松さんが尋ねると、店長はキッチンの隅を指差した。
「ここです。でも、ちゃんと使えるかどうか不安で…」
「消火器の点検は定期的に行っていますか?」
「いえ、まだそこまでは…」
「消火器は、いざという時に作動しなければ意味がありません。点検は必ず定期的に行い、期限切れの場合は交換してくださいね」
小松さんの言葉に、店長は真剣な表情でうなずきながらメモを取っていた。
店内のチェックを終えると、次は避難経路の確認に移った。
店内は広めだったが、通路が狭く、避難経路が物で塞がれている場所もあった。
「この非常口の前、物が置かれていて、すぐには開けられない状態ですね」
渡辺さんが指摘すると、店長は焦ったように「すぐに片付けます!」と答えた。
「避難経路は、緊急時には命を守るための大事な通路です。常に何も置かず、すぐに使える状態にしておく必要がありますよ」
小松さんが真剣に助言を送ると、店長は深く感謝の意を示した。
「防災対策って、おしゃれなお店にはちょっと遠い話かと思っていましたけど、やっぱりお客様の安全が最優先ですね」
店長はすっかり意識が変わった様子だった。
「おしゃれと安全、両方をしっかり考えてお店作りをしていけば、もっと安心できる場所になりますよ」
小松さんが優しく微笑んで言うと、店長も「そうですね、頑張ります!」と元気に答えた。
こうして二人はカフェを後にした。
「カフェでも、しっかりとした防災対策が必要なんですねぇ」
渡辺さんがつぶやく。
「どんな場所でも、安全を守ることが大事だからね。見た目よりも、まずはお客さんの命を守ることが最優先だよ」
小松さんが、少し真剣な顔で答えた。
こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。
どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。