• より良い防災施策をご提案いたします。

彼の名は小松五郎、フリーの防災コンサルタントである。

五郎は防災について独自の哲学を持ち、その哲学を求めて一人歩き続ける。

今日は、横浜市内にある小規模な福祉施設から依頼が入った。

施設の運営者である井上さんは、主に高齢者を受け入れているが、地震や台風といった自然災害への備えに不安を感じているとのことだった。

特に、避難計画が曖昧なままで、緊急時の対応が不安要素となっているようだ。

五郎は施設の玄関に到着すると、井上さんがすぐに出迎えてくれた。

「小松さん、お待ちしておりました。実はこの施設、避難経路が複雑で、高齢者の皆さんをどう安全に避難させるか悩んでいます。何かアドバイスをいただけますか?」

五郎は施設内を見渡しながら静かに頷いた。

建物は狭く、車椅子や歩行器を使っている利用者が多いため、迅速な避難が難しそうだ。

「まずは、避難経路を確認しましょう。高齢者や体力の低い方にとって、避難のスピードが最重要です。最短のルートを見つけ、通路が確保されているかを確認することが必要です」

二人は、施設内の避難経路をじっくりと確認していった。

ところどころに椅子や荷物が置かれており、避難時に妨げになる可能性がある。

「この通路にある物はすぐに片付けた方がいいですね。緊急時には、すべての邪魔になる物を排除し、移動しやすい道を確保しておくことが最優先です」

「確かに、荷物や備品が多くて、どうしても置いてしまっていました。早急に片付けます」

と井上さんは答えた。

さらに、五郎は避難用のスロープや手すりについても指摘した。

「高齢者が自力で避難できない場合、スロープや手すりの設置が不可欠です。また、スタッフがサポートする際に、手早く車椅子を使えるように準備しておくと、スムーズに避難できます」

井上さんは驚いた様子で頷き、「そうですね、今までスロープのことはあまり考えていませんでした。手すりもすぐに確認してみます」と話した。

次に、五郎は「防災訓練を定期的に行うことが重要です」と強調した。

「特に、高齢者の避難には時間がかかるため、スタッフがスムーズに対応できるよう訓練を重ねることが必要です。緊急時にパニックにならないためにも、事前の訓練が命を救います」

「実は、防災訓練をしていないわけではないのですが、どうしても形式的になってしまっていて…」

と井上さんは困ったように話した。

「訓練はリアルなシチュエーションを意識して行うことが重要です。避難ルートを実際に歩き、スタッフ全員が役割を理解することで、緊急時の動きが変わります。特に高齢者の施設では、避難手順を実際に試すことが不可欠です」

最後に、五郎は備蓄品の確認についても助言した。

「災害時には、施設内に数日間閉じ込められる可能性があります。そのため、非常食や水、医薬品、また電源の確保を考慮しておく必要があります。特に医薬品は、常に更新しておきましょう」

「医薬品の備蓄までは考えていませんでしたが、それが必要なんですね。早急に準備します」

と井上さんは答えた。

五郎は施設を後にし、夜の街に静かに歩み出した。

「高齢者や弱者がいる場所こそ、万全の備えが必要だ。誰一人取り残さない防災対策が、地域の安心を守ることに繋がる」

今日もまた、五郎は孤独な防災の道を歩み続ける。