残念な防災図鑑　２７

横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々様々な依頼が舞い込んでくる。

「小松先輩、今度はスーパーからの依頼ですよ」

渡辺さんが資料を手にしながら、少し楽しげに言った。

「スーパーか。お客さんも多いし、品物もたくさんあるから、地震が来たときにどうなるか心配だね」

小松さんは真剣な表情で返事をした。

「棚が倒れてきたり、商品が散らばったりしたら大変ですもんねぇ」

渡辺さんも頷きながら続ける。

二人が向かったのは、横浜市内の大型スーパー。

平日のお昼時でも多くのお客さんが買い物をしており、店内は活気に溢れていた。店長が二人を迎え入れた。

「ようこそお越しくださいました。最近、地震が多くて心配しているんです。お客さんの安全をどう確保すればいいのか…」

店長は少し不安げな表情で話し始めた。

「まずは店内を見せていただけますか？」

小松さんが尋ねると、店長はすぐに案内を始めた。

店内には高い棚がずらりと並び、商品がぎっしりと陳列されていた。

「この棚、全部が高いですね。地震が来たら、倒れてしまう可能性が高いです」

小松さんが指摘すると、店長は眉をひそめた。

「実は、まだ何も対策していなくて…どうしたらいいんでしょうか？」

「棚を固定することが一番です。壁にしっかりと固定すれば、倒れる心配が減りますし、商品も守れますよ」

「なるほど…確かに、それなら安心ですね」

店長は納得したように頷いた。

「あと、棚の上に重い商品を置かないようにするのも大事です。地震のときに落ちてくると、お客さんが怪我をするかもしれませんから」

渡辺さんが優しい声で説明した。

「そうですね…すぐに配置を見直します」

店長はメモを取りながら、すぐに改善することを決めた。

次に二人は、非常口や避難経路の確認に移った。

いくつかの非常口の前に荷物が置かれており、すぐに開けられない状態になっていた。

「この非常口、いざというときに使えないと意味がないです。荷物はどかして、いつでもすぐに避難できるようにしておいてください」

小松さんが少し厳しい口調で言うと、店長は慌てて謝った。

「すみません、すぐに片付けます…」

「避難経路も、お客さんがスムーズに動けるように、通路が広めに取られているといいですね。狭い通路だと、パニックになったときに混雑して危険ですから」

渡辺さんが続けて提案した。

「わかりました。通路の配置も見直してみます」

店長はしっかりとメモを取り続けている。

最後に、二人は防災用品の確認を行った。非常用の飲料水や非常食が備えられていたが、消火器の設置数が少ないことに気づいた。

「消火器が少ないですね。火災が発生した場合、すぐに対応できるように、もう少し多めに設置した方がいいです」

小松さんが冷静にアドバイスした。

「そうなんですか？あまり気にしていなかったので…すぐに増やします」

店長はすぐに対応することを約束した。

「最後に、避難訓練をどのくらいの頻度で行っていますか？」

渡辺さんが問いかけると、店長は少し恥ずかしそうに答えた。

「実は…あまり頻繁にはしていなくて。でも、お客さんが多い場所なので、やっぱりもっとやった方がいいですよね？」

「その通りです。避難訓練を重ねることで、従業員の皆さんが落ち着いて対応できるようになりますし、お客さんも安心できます」

小松さんがしっかりと助言を送った。

「そうですね…これからは定期的に訓練を行います」

店長は真剣な表情で決意を述べた。

帰り道、渡辺さんがぽつりとつぶやいた。

「スーパーって、買い物の場所だけど、安全もちゃんと確保されていると、もっと安心して来られますねぇ」

「そうだね。安全対策がしっかりしていれば、何かが起きたときもパニックにならずに済むしね。防災は見えないところが大事なんだ」

小松さんがそう言って微笑んだ。

こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。

どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。