横浜市に住む女子高生、小松みくは、他の同級生とは少し違った趣味を持っている。
それは「防災」。
小松さんは、小さい頃に地震で怖い思いをして以来、ずっと防災について興味を持ってきた。
地震や台風など、いつ何が起こるかわからない災害に備えるため、彼女は独自の「防災ノート」を作り、そのノートには自分が調べた知識や、オリジナルの防災術がぎっしりと詰まっていた。
週末の午後、小松さんは地元の図書館で防災関連の本を読んでいた。そこへ、顔なじみの図書館司書、中村さんが近づいてきた。
「小松さん、また防災の本を読んでいるのね」
「はい、ちょっと新しい情報を集めていて」
小松さんがにっこりと答えると、中村さんはため息をついた。
「実は、図書館でも防災対策を見直そうと思っているの。最近、地震が増えてるし、万が一の時にどう対応したらいいか悩んでいて…」
「それならお手伝いしますよ!」
小松さんはすぐに防災ノートを取り出し、頼もしい表情を見せた。
「本当?助かるわ。具体的にどんな準備をすればいいのか、全然分からなくて」
「まずは、地震のときに本が落ちてこないようにするのが大切です。棚をしっかり固定するか、地震で倒れにくいように低めの棚に変えるのもいいですね」
「なるほど、それならすぐにできそうね」
中村さんはメモを取りながら、小松さんの話に聞き入っていた。
「あと、避難経路の確認も重要です」
小松さんは図書館のレイアウトを思い浮かべながら言った。
「お客さんがたくさんいるときに地震が来たら、パニックになってしまうかもしれないので、避難口へのルートがちゃんと分かるように案内表示を増やすと良いと思います」
「案内表示ね。確かに、今の表示はちょっと見づらいかも…」
中村さんは頷きながら、さらに質問を重ねた。
「でも、お客さんがたくさんいるときに停電が起きたらどうしよう?懐中電灯を準備しておくべきかしら?」
「はい、懐中電灯は必ず備えておいてください。それから、手回し式のラジオや、スマホの充電ができるポータブルバッテリーもあると安心です」
小松さんはノートのページをめくりながら、具体的なアイテムのリストを見せた。
「もしお客さんがここにしばらく避難することになったときのために、水や非常食も少し置いておくと良いですよ」
「うーん、なるほどね。そんなに色々と考えなきゃいけないんだ…でも、これで少しイメージができたわ」
中村さんは感心しながら言った。
「小松さんのノート、すごく頼りになるね」
「ありがとうございます。いつも色々調べて書き込んでいるんです」
「それにしても、高校生でここまで詳しいなんて…どうやってそんなに勉強してるの?」
「いろいろな本を読んで、実際に使えそうなアイデアを試したり、地域の防災訓練に参加したりしています。防災って、知識があるだけじゃなくて、それをどう生かすかが大事なので」
「小松さん、本当に立派ね。うちの図書館でも防災についてもっと知ってもらえるようなイベントを考えてみようかしら」
「それはいいアイデアですね!お客さんと一緒に防災について考える機会が増えれば、みんなの意識も高まると思います」
中村さんは嬉しそうに笑い、
「そうね。小松さん、いろいろとありがとう。また何かあったら相談させてね」
と言った。
「いつでもどうぞ!」
小松さんは防災ノートを閉じ、中村さんに笑顔で答えた。
防災ガール、小松みくの秘密ノートは、今日も新しいアイデアでいっぱいになっていく。
彼女の小さな行動が、横浜の街を少しずつ安心な場所に変えていることを、小松さん自身はまだ知らないのかもしれない。