横浜市に住む女子高生、小松みくは、他の同級生とは少し違った趣味を持っている。
それは「防災」 。
小松さんは、小さい頃に地震で怖い思いをして以来、ずっと防災について興味を持ってきた。
地震や台風など、いつ何が起こるかわからない災害に備えるため、彼女は独自の「防災ノート」を作り、そのノートには自分が調べた知識や、オリジナルの防災術がぎっしりと詰まっていた。
ある日曜日の朝、小松さんは地域のフリーマーケットに出かけていた。
地元の人たちが集まるこのイベントは、小松さんにとって防災グッズのチェックや情報収集の場でもあった。
ブースを回っていると、知り合いの松本さんが声をかけてきた。
「おはよう、小松さん!今日はお買い物?」
「おはようございます、松本さん。はい、ちょっと見て回ってました。松本さんはお店を出しているんですか?」
「そうそう、今日はちょっとした小物を売ってるんだけどね。でも実は、うちの店の防災対策をどうしようか悩んでて…」
「それならお手伝いしますよ!」
小松さんはすぐに防災ノートを取り出し、松本さんの話を聞く準備をした。
「ありがとう、助かるよ。うちは古い建物だから、地震が来たときに商品が倒れたりしないか心配なんだ」
「なるほど、それならまず、棚の固定を考えた方がいいですね」
小松さんは具体的なアイデアを提案した。
「地震対策用のL字金具や、家具を壁にしっかり固定する器具があるので、それを使えば棚が倒れる心配が減ります」
「L字金具か…それなら簡単に取り付けられそうだね」
松本さんはメモを取りながら頷いた。
「でも、古い建物だから、壁に穴を開けるのはちょっと気が引けるんだよね」
「そういう場合は、家具固定用のストラップを使うのも手です。壁に穴を開けなくても、棚と壁をしっかりつなげておけますよ」
「へえ、そんな便利なものがあるんだ。それなら試してみたいな。でも、商品が落ちてくるのも心配だし、どうしたらいいかな?」
「その場合は、棚の前に透明なストッパーをつけるのがおすすめです」
小松さんはノートをめくりながら説明を続けた。
「見た目を邪魔せずに、地震のときに商品が飛び出すのを防げます。それと、商品をできるだけ重いものから下の方に置くようにすると、安定しますよ」
「確かに、それなら安心だ。小松さん、やっぱり詳しいね」
松本さんは感心しながら笑った。
「いやいや、まだまだ勉強中です。でも、少しでもお役に立てて嬉しいです」
小松さんも笑顔で答えた。
「それと、非常時に備えて店の中に懐中電灯や非常食を用意しておくと、もし避難場所として使うことになっても安心です」
「非常食か…確かに、いざというときのために準備しておいた方が良さそうだね」
松本さんは考えながらメモを続けた。
「おかげで、うちの店の防災対策が少しずつ見えてきたよ。本当にありがとう」
「どういたしまして。これからも何かあったら、いつでも相談してくださいね」
「また頼りにさせてもらうよ。ありがとう、小松さん」
松本さんが手を振って見送る中、小松さんは防災ノートを閉じ、次のブースへと向かった。
防災ガール、小松みくの秘密ノートは、今日も新しいアイデアでいっぱいになっていく。
彼女の小さな行動が、横浜の街を少しずつ安心な場所に変えていることを、小松さん自身はまだ知らないのかもしれない。