横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々様々な依頼が舞い込んでくる。
「小松先輩、今日は映画館からの依頼ですよ」
渡辺さんが、資料を広げながら少し楽しそうに言った。
「映画館か。暗い中で何かあったらパニックになる可能性が高いね」
小松さんはすぐに想像を巡らせながら答えた。
「確かに。たくさんの人が集まる場所ですし、避難経路の確認が重要ですねぇ」
渡辺さんが柔らかく続けた。
二人は依頼を受けて、横浜市内の大型映画館へ向かった。
到着すると、支配人が二人を迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました。最近、地震が多くて不安になりまして…映画館は暗いですし、何かあったときにどう対応するのが正しいのかがわからなくて」
支配人は少し困った顔をして説明を始めた。
「まずは館内を見せていただけますか?」
小松さんが提案すると、支配人はさっそく案内を始めた。
まず二人が訪れたのは、広々としたロビー。
そこにはおしゃれなインテリアが並び、観客がくつろげるスペースが設けられていた。
しかし、いくつかの問題点がすぐに目に留まった。
「このロビー、すごくおしゃれですけど、家具が多いですね」
渡辺さんが指摘すると、支配人は少し困ったような顔をした。
「やっぱり家具が多すぎますか?」
「はい。地震が起きたときに倒れてしまうと、観客の避難を妨げる可能性があります。特にガラス製のテーブルは危険なので、位置を調整するか、固定しておくといいですよ」
小松さんが具体的にアドバイスをした。
「なるほど…わかりました。すぐに見直します」
支配人は真剣な表情で頷いた。
次に、二人は上映室に移動した。館内は暗く、観客が座る椅子がぎっしりと並んでいた。
「上映中に地震が起きたら、観客はどう避難するんですか?」
小松さんが尋ねると、支配人は少し悩んだ様子で答えた。
「正直、そこまで具体的な計画は立てていないんです…」
「それなら、非常灯を増設して、避難経路をわかりやすくするのが効果的です。暗い中では、視覚的に誘導されることで落ち着いて避難できる人が増えますから」
渡辺さんが提案すると、支配人は大きく頷いた。
「確かに、非常灯があると安心感が増しますね」
「あと、避難訓練も重要です。スタッフ全員が観客を誘導する役割を理解していないと、パニックになってしまいます」
小松さんが続けると、支配人はメモを取りながら「早速、訓練を計画します」と答えた。
さらに、二人は非常口の確認に移った。非常口の近くにはポスターや看板が設置されており、通路を狭くしていた。
「この非常口、すぐに使えるようにしないと意味がないです。装飾品は別の場所に移動してください」
小松さんが少し厳しい口調で言うと、支配人は「わかりました、すぐに片付けます」と答えた。
最後に、防災用品の確認を行った。映画館には簡易的な防災用品が用意されていたが、数が不足しているようだった。
「防災用品の数が少ないですね。特に水や簡易食は、観客が多い場合を考えると、もっと多めに備えておくと安心です」
小松さんが指摘すると、支配人は感謝の表情を浮かべた。
「ありがとうございます。これを機に、全体的に見直してみます」
帰り道、渡辺さんがぽつりとつぶやいた。
「映画館って非日常を楽しむ場所だけど、安全が整っていると、さらに安心して楽しめますよねぇ」
「その通りだね。何か起きたときに冷静に対応できる準備が、観客の命を守ることにつながるから」
小松さんがそう言って微笑んだ。
こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。
どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。