• より良い防災施策をご提案いたします。

横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々様々な依頼が舞い込んでくる。

「小松先輩、今日は美術館からの依頼です」

渡辺さんが、少し興味深そうに資料を手に話しかけた。

「美術館か…絵画や彫刻みたいに、壊れやすいものが多い場所は特に難しいね」

小松さんは資料をじっと見つめながら答えた。

「そうですねぇ。展示品の安全だけじゃなく、来館者の避難計画も考えないと」

渡辺さんは資料をめくりながら頷いた。

二人が美術館に到着すると、館長が出迎えてくれた。

「お越しいただきありがとうございます。美術館として、防災にもっとしっかり取り組みたいのですが、どこから手をつけたらいいのか…」

館長は少し困った表情で話し始めた。

「まずは館内を見せていただけますか?」

小松さんが提案すると、館長はすぐに案内を始めた。

最初に案内されたのは、広い展示室だった。

美術品が美しく配置されていたが、いくつか気になる点があった。

「この彫刻、固定されていませんね。地震が起きたら倒れる可能性が高いです」

小松さんが指摘すると、館長は少し驚いた表情を見せた。

「確かに…固定はしていませんでした。でも、どうやって固定すればいいのか」

「専門の固定具を使えば、美術品を傷つけずに安全を確保できます。特に大きな作品は、壁や台座としっかり連結する方法を考えた方がいいですね」

渡辺さんが柔らかい口調で補足した。

「なるほど…ありがとうございます。さっそく対策します」

次に二人は、壁に展示された絵画の確認を行った。

絵画の多くはフックにかかっているだけで、揺れに対する耐久性が十分ではないように見えた。

「このフック、揺れに弱いですね。地震のとき、絵画が落ちるリスクがあります」

小松さんが指摘すると、館長は真剣な表情でメモを取り始めた。

「どうすれば落下を防げるでしょうか?」

「耐震フックを使うといいです。それに、絵画の下部も軽く固定することで、揺れに強くなります」

渡辺さんがアドバイスすると、館長は頷きながらメモを取っていた。

「展示品を守るだけでなく、来館者の安全も確保する必要がありますよね」

館長が続けて言った。

「その通りです。避難経路の確保や、非常口の配置が重要です」

小松さんが答えた。

非常口の確認に移ると、いくつかの非常口の前に展示用のパネルが設置されており、すぐに通れる状態ではなかった。

「この非常口、すぐに使えないと意味がありません。展示物の配置を見直してください」

小松さんが厳しい口調で言うと、館長は「わかりました、すぐに対応します」と答えた。

最後に、防災訓練について確認した。

「スタッフの皆さんで避難誘導の訓練はされていますか?」

渡辺さんが尋ねると、館長は少し申し訳なさそうに答えた。

「年に一度程度ですが、それでは不十分ですよね?」

「その通りです。特に美術館では、来館者がゆっくり見ている中で災害が起きるとパニックになりがちです。スタッフ全員で避難誘導の役割を理解しておくことが大切です」

小松さんが真剣に答えた。

「ありがとうございます。訓練の頻度を増やして、スタッフ全員で取り組みます」

帰り道、渡辺さんがふと呟いた。

「美術館って静かで落ち着く場所ですけど、災害が起きたら一気に危険になりますねぇ」

「そうだね。でも、しっかり対策をしておけば、観客も作品も守ることができる。防災は、見えない部分を整えることが大事だよ」

小松さんが静かに答えた。

こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。

どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。