横浜市のオフィス街にある防災コンサルティングを行う株式会社防災小町では、日々様々な依頼が舞い込んでくる。
「小松先輩、今日はショッピングモールからの依頼です」
渡辺さんが資料を見ながら話しかけた。
「ショッピングモールか。広いし、人も多いから、防災対策にはかなり気を使わないとね」
小松さんは真剣な顔で答えた。
「特に休日なんて、家族連れでいっぱいになりますしねぇ」
渡辺さんも少し心配そうに頷いた。
二人が向かったのは、横浜市内にある大型ショッピングモール。
華やかな装飾と広々とした空間が出迎えてくれた。
エントランスで待っていたのは、モールの防災担当者だった。
「お忙しい中ありがとうございます。最近の災害ニュースを見て、防災対策を強化したいと思ったのですが、具体的にどう改善すればいいのかがわからなくて」
担当者は少し申し訳なさそうに話した。
「まずはモール全体の避難経路や非常口、それから各店舗の安全対策を見せていただけますか?」
小松さんが提案すると、担当者はすぐに案内を始めた。
最初に向かったのは、中央の吹き抜けスペースだった。
人が集まりやすい場所である反面、大きなディスプレイや装飾物が天井から吊り下げられていた。
「このディスプレイ、地震が起きたら落ちてくる可能性がありますね。吊り下げ部分がしっかり固定されているか確認しましたか?」
小松さんが尋ねると、担当者は少し戸惑いながら答えた。
「ええ、確認はしましたが…あまり詳しくは見ていませんでした」
「専用の耐震金具を使って固定することをおすすめします。見た目には変わらないので安心してください」
渡辺さんが優しくアドバイスした。
「そうですか…それならすぐに対策を検討します」
担当者はメモを取りながら答えた。
次に二人は、フードコートへと移動した。
そこには多くのテーブルと椅子が配置されていたが、一部の通路が狭くなっていることに気づいた。
「この通路、少し狭いですね。緊急時には混雑してパニックになる可能性があります」
小松さんが指摘すると、担当者は驚いたように頷いた。
「確かに、避難の際に影響が出そうですね」
「テーブルや椅子をもう少し整えて、通路を広く取るといいですよ。日常でも使いやすくなるはずです」
渡辺さんが笑顔で付け加えた。
「なるほど…その視点はありませんでした。さっそく検討します」
さらに、二人は各店舗の安全対策も確認した。
多くの店舗では、商品のディスプレイが高く積み上げられていたり、避難経路が塞がれている店舗が見受けられた。
「商品のディスプレイ、地震が来たら崩れる可能性がありますね。高さを抑えて、軽い商品を上に配置するように指導してください」
小松さんが指摘すると、担当者は深く頷いた。
「わかりました。各店舗にすぐに伝えます」
「避難経路も常に確保することを徹底してください。お客様の命を守るためには、緊急時にすぐ行動できる状態が必要です」
渡辺さんが補足すると、担当者は真剣な表情でメモを取った。
最後に、防災用品の確認を行った。
飲料水や簡易食が備えられていたが、AEDや応急処置キットの設置場所がわかりにくい状態だった。
「AEDや応急処置キット、もっと目立つ場所に配置してください。災害時だけでなく、日常の急病人にも対応できます」
小松さんが冷静にアドバイスした。
「なるほど…その視点も考えます」
「防災は見えない部分が重要です。お客様が安心して利用できるモールを目指していきましょう」
渡辺さんが柔らかい声で締めくくると、担当者は感謝の意を込めて頭を下げた。
帰り道、小松さんがふと呟いた。
「ショッピングモールみたいに人が集まる場所は、一つのミスが大きな影響を与えるね」
「そうですねぇ。でも、小さな改善が積み重なれば、みんなが安心して楽しめる場所になりますよね」
渡辺さんが優しく応じた。
こうして、二人の防災対策の仕事は続いていく。
どんな現場であれ、彼女たちがしっかりとした助言を与えることで、少しずつ改善が進んでいくのだろう。