横浜市に住む女子高生、小松みくは、他の同級生とは少し違った趣味を持っている。
それは「防災」 小松さんは、小さい頃に地震で怖い思いをして以来、ずっと防災について興味を持ってきた。
地震や台風など、いつ何が起こるかわからない災害に備えるため、彼女は独自の「防災ノート」を作り、そのノートには自分が調べた知識や、オリジナルの防災術がぎっしりと詰まっていた。
その日、小松さんは学校の放課後に、友達の春奈と一緒に商店街のパン屋「ふわふわベーカリー」を訪れていた。
店内は焼きたてのパンの香りで満たされていて、二人はカウンター席に座りながらおしゃべりを楽しんでいた。
「ここのクロワッサン、本当に美味しいよね」
春奈が嬉しそうに言うと、小松さんも頷いた。
「うん、この香りがたまらないよね」
そこへ店主の山田さんが声をかけてきた。
「小松さん、春奈ちゃん、来てくれてありがとう」
「こんにちは、山田さん。お邪魔してます」
小松さんが笑顔で答えると、山田さんは少し困った顔をして椅子に腰を下ろした。
「実はね、最近このパン屋の防災対策をどうするか悩んでて…特に台風が来たとき、どうやって商品を守ればいいのか分からなくて」
「それなら私たちが一緒に考えますよ」
小松さんは防災ノートを取り出し、山田さんの話に耳を傾けた。
「ありがとう。本当に助かるよ。ここの窓が大きいから、強風で割れたりしたらどうしようって思ってね」
「まず、窓にはガラス飛散防止フィルムを貼るのが良いですね」
小松さんは自信を持って答えた。
「これを貼るだけで、ガラスが割れても破片が飛び散らなくなります」
「そんな便利なものがあるんだね」
山田さんは驚いた表情で頷いた。
「それと、商品棚の上に重いものを置かないようにするのも大切です。地震や強風で揺れると、物が落ちて危険なので」
「なるほど、それはすぐにでもできそうだ」
山田さんは早速メモを取り始めた。
「でも、他に台風のときに気をつけることってあるかな?」
「あります。外に出ている看板やプランターも、必ず店内にしまってください。強風で飛ばされると危ないですから」
「そうか、それは盲点だったな…確かに、うちの看板、結構軽いから飛んでいっちゃいそうだ」
「あともう一つ。排水口の掃除も忘れないでください。雨水が詰まると浸水の原因になります」
「排水口か…それも確認しておかないとな」
山田さんは真剣に聞き入っていた。
「小松さん、本当にありがとう。これで安心して次の台風に備えられそうだよ」
「お役に立てて良かったです。また何かあったらいつでも相談してください」
小松さんは防災ノートを閉じて微笑んだ。
「パンを食べながら防災の話って、なんか不思議だね」
春奈が笑いながら言うと、小松さんもつられて笑った。
「でも、防災はどんなときでも考えられるからね」
防災ガール、小松みくの秘密ノートは、今日も新しいアイデアでいっぱいになっていく。
彼女の小さな行動が、横浜の街を少しずつ安心な場所に変えていることを、小松さん自身はまだ知らないのかもしれない。