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防災を担当者一人でやらせない

企業や自治体、学校、地域団体など、さまざまな組織で「防災担当者」が置かれていることがあります。
確かに、専門知識を持った人が中心となって計画や対策を進めることは重要です。
しかし、防災を一人の担当者に任せきりにしてしまうことは、かえって組織全体のリスクを高めてしまう可能性があります。
この記事では、「防災は全員で取り組むべきもの」という視点から、その理由と具体的な対策について詳しく解説します。

なぜ防災を一人に任せてはいけないのか

防災担当者を置くこと自体は決して悪いことではありません。
ただし問題なのは、「防災はあの人がやってくれるから」と周囲が無関心になってしまうことです。
担当者が不在のときや、災害発生時に動けない状況に陥った場合、誰が代わりに行動できるのでしょうか。
災害は予定通りに発生するものではなく、タイミングも状況も予測不可能です。
だからこそ、防災に関する知識や行動力は、組織の中に広く分散していなければなりません。

また、現代の災害リスクは多様化・複雑化しており、一人の知識や経験ではすべてに対応しきれないことも多くなっています。
地震、豪雨、台風、火災、感染症──それぞれに対する対応や備えが必要であり、多様な視点を持った人材が関わることで、より現実的かつ効果的な防災体制を築くことができます。

防災は「チーム」で動かすべき

理想的な防災体制とは、担当者が中心となりつつも、他のメンバーも積極的に関与し、協力しながら仕組みを作っていくものです。
たとえば企業であれば、総務だけでなく現場スタッフ、営業部門、IT部門など、各部署が役割を持ち寄ることで、全体として柔軟で機能的な体制になります。

また、日頃から「誰がどの役割を担うか」「何を優先して対応するか」といった点を明確にしておけば、災害発生時にも慌てることなく行動できます。
防災を共通の業務と捉え、定期的な訓練や情報共有の機会を持つことが、非常時に組織としての力を発揮する鍵になります。

担当者を孤立させない仕組みを作る

実際に防災を担当する人の中には、「誰も協力してくれない」「何をどうすればよいか分からない」と悩んでいるケースもあります。
そうした孤立を防ぐためには、まず上層部が防災の重要性を理解し、全体に周知徹底することが不可欠です。

さらに、防災活動に必要な時間や予算をしっかり確保することも大切です。
会議に防災の議題を定期的に設ける、研修や訓練に全員が参加するなど、組織全体が「防災は自分ごと」として捉える文化をつくることが、担当者を支える最大の支援になります。

仕組みを残す、継承する

防災担当者が異動したり退職したりすると、その人の持つノウハウが失われてしまうことがあります。
これは非常に大きなリスクです。
防災は個人の知識や感覚に頼るのではなく、組織としての「仕組み」として維持し、継続できるようにしておく必要があります。

そのためには、マニュアルやチェックリストの整備、デジタル化された共有資料の作成、後任者への引き継ぎ体制などが重要です。
属人化を防ぎ、誰が見ても理解できる形にしておくことで、防災の質は大きく向上します。

一人の責任ではなく、みんなの力で守る

防災は、命と生活を守るための活動です。
その重責を一人の担当者だけに背負わせるのは、本人にとっても、組織にとってもリスクです。
「担当者がいるから安心」ではなく、「みんなが防災意識を持っているから安心」という状態を目指すことこそ、本当に強い防災体制です。

「いざというとき、自分が何をすべきか」を全員が知っている状態をつくることが、最も確実な備えなのです。

まとめ

防災は一人の専門家に任せて完結するものではありません。
組織の全員が関わり、知識を共有し、役割を担い合うことで、はじめて機能するものです。
担当者にすべてを押しつけるのではなく、支え合い、継続可能な防災体制を構築することが、未来の安全を守る力になります。
今日からできる小さな連携が、明日の大きな命綱になるのです。