災害が発生した直後、私たちの生活は一瞬にして日常から切り離されます。
電気、水道、ガスといったライフラインは停止し、コンビニやスーパーの棚からは食料や水が瞬く間に消えます。
このような非常時に命を守るのが、自宅に備えておく「防災備蓄」です。
行政などが「最低3日分、できれば7日分の備蓄を」と繰り返し呼びかけるのには、明確な理由があります。
本記事では、その根拠と背景をわかりやすく解説し、家庭で実践できる備蓄の考え方についてもご紹介します。
大規模な地震や台風、豪雨などの災害発生直後は、救助や支援活動が最優先されます。
そのため、食料や水などの物資がすぐに一般家庭へ届くわけではありません。
特に、道路が寸断されたり交通機関が麻痺している場合、救援物資の到着には時間がかかります。
国や自治体の指針では、災害発生から支援が届くまでの「空白の72時間(3日間)」を自力で生き延びることが求められています。
これは、被災者の命を守るための最低限のラインであり、この間に必要な水・食料・医薬品などを備えておくことが強く推奨されている理由です。
実際の災害では、「3日で支援が来る」とは限りません。
阪神・淡路大震災や東日本大震災など、過去の大規模災害の事例を見ても、7日以上支援が滞った地域は少なくありません。
地形や道路状況、天候によっては、救援物資の配布が遅れ、孤立状態が長期化することもあります。
さらに、人口が多い都市部では支援の量が足りず、配布が追いつかない可能性もあります。
「できれば7日分」の備蓄は、こうした想定外の長期化に備えるための現実的な対応策です。
特に乳幼児、高齢者、持病を抱える方がいる家庭では、通常の生活に必要な物資を十分に確保しておく必要があります。
防災備蓄の基本は、「一人あたり一日3リットルの飲料水と3食の食料」をベースに考えることです。
これを7日分とすると、一人につき水は21リットル、食料は21食分が必要になります。
これに加え、衛生用品や簡易トイレ、常備薬、電池や懐中電灯、モバイルバッテリーなども不可欠です。
家族構成や住まいの状況に応じて、必要なものをリストアップし、無理のない範囲で少しずつ備蓄を増やしていく方法が現実的です。
備蓄というと「大量に買って保管する」イメージがありますが、ポイントは「日常に取り入れて、使いながら備える」ことです。
これをローリングストック法と呼び、普段使っている食料や水を少し多めに買い置きし、使った分を補充することで、常に一定の量をキープすることができます。
この方法なら賞味期限の管理がしやすく、無駄が出にくいだけでなく、備蓄のハードルもぐっと下がります。
また、災害時に普段と同じものを食べられるという安心感も大きなメリットです。
「備蓄はなんだか大げさ」と思われるかもしれませんが、災害はいつ、どこで、誰に起こるか分かりません。
来ないかもしれないのではなく、「いつか必ず来るかもしれない」と考えて備えることが、命を守ることにつながります。
そして、自分や家族の命を守る備えは、周囲への迷惑を減らすことにもなります。
自助が整っていれば、共助や公助のリソースを本当に必要とする人たちに回すことができるのです。
「防災備蓄は最低3日、できれば7日」と言われる理由は、支援が届くまでに時間がかかる現実を踏まえた、命を守るための具体的な目安です。
災害発生直後の混乱の中、自力で生活を維持するためには、水・食料・生活用品の備えが不可欠です。
今日からできるローリングストックなど、日常生活の中に防災を取り入れることで、無理なく備えることが可能になります。
今すぐ始められることから、一歩ずつ。
備えは「安心」を買う行動でもあるのです。