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避難所で暮らすことを前提にしてはいけない理由

災害時の避難という言葉を聞くと、多くの人が公民館や体育館といった避難所を思い浮かべます。
そして、いざというときはそこに行けばなんとかなる、支援物資が届く、布団がある、食事が提供される。
そんなイメージを持っている人は少なくないかもしれません。

しかし、現実は決してそう甘くありません。
避難所はあくまで緊急時の一時的な避難場所であり、そこに長期間「暮らす」ことを前提にしてしまうと、思わぬ苦しみやトラブルに直面することになります。

この記事では、なぜ避難所で暮らすことを前提にしてはいけないのか、その理由と、今からできる現実的な備えについて解説します。

避難所は「安全を確保する場所」にすぎない

避難所の目的は、あくまでも命を守るための一時的な避難場所です。
自宅が倒壊の危険にさらされていたり、火災や津波の恐れがある場合に、身を守るために一時的に避難する場所として設けられています。
避難所はホテルでも仮設住宅でもなく、生活の場として設計されているわけではありません。

特に災害発生から数日は、物資も人手も圧倒的に不足します。
毛布や食料が行き渡らない、トイレが使えない、プライバシーが確保されないといった問題が多発し、避難所での生活は極めて厳しいものになります。

想像以上に過酷な避難所の現実

地震や水害で避難所が開設されると、想定を超える人数が一斉に押し寄せることがあります。
1人あたりのスペースはわずか1畳程度。
プライバシーがほとんどなく、冷暖房の効かない空間で、不自由な生活を強いられることになります。

また、避難所には高齢者、乳幼児、障害のある方など、特別な配慮が必要な人たちも多く避難してきます。
騒音、体調不良、ストレスの蓄積などにより、避難所生活が健康を損なう原因になることもあります。

実際、過去の大災害では、避難所での体調悪化やストレスによる災害関連死が少なくありませんでした。
避難所に行けば安心、ではなく、避難所は最終手段だと考えておく必要があります。

自宅避難の選択肢を考えておく

災害時の避難というと「避難所に行くこと」だと思いがちですが、実は「自宅避難」という選択肢もあります。
建物が安全でライフラインの一部が使えるなら、自宅で過ごしたほうが快適で安心できるケースもあります。

自宅避難を可能にするためには、飲料水、食料、トイレ、照明、防寒具など、最低限の生活を維持できる備えをしておくことが大切です。
ローリングストックや簡易トイレ、モバイルバッテリーの準備だけでも、大きな安心材料になります。

また、車中泊や親戚宅への避難など、自宅以外の第2、第3の避難先を考えておくのも効果的です。
避難=避難所という固定観念にとらわれず、柔軟に行動できる準備をしておくことが求められます。

避難先は「選択肢」として考えるべき

災害が起きたとき、自分や家族がどこに避難するのか。
あらかじめ選択肢を持っておくことが非常に重要です。
自宅が使える場合は在宅避難。
安全な場所に車で移動して過ごせるなら車中避難。
近くの知人宅を頼ることもできるかもしれません。

避難所はその中のひとつに過ぎません。決して唯一の答えではないのです。
どの選択肢も、メリットとデメリットがあります。
それを事前に知っておくことで、いざというときの判断が早くなり、無用な混乱を避けることができます。

まとめ

避難所で暮らすことを前提にした防災計画では、現実の災害に対応しきれない可能性があります。
避難所は命を守るための一時避難場所であり、生活の場ではありません。
だからこそ、自宅避難や車中避難、知人宅への避難など、複数の選択肢を用意し、それぞれに備えておくことが大切です。

日頃からの小さな準備が、避難所に頼らない強さを生み出します。
避難所ありきの備えではなく、避難しないための備えも忘れずに。
自分と家族を守るために、今できることから始めていきましょう。