• より良い防災施策をご提案いたします。

どこに逃げるよりもどこで生き延びるかが大事な理由

地震や台風、豪雨、火山噴火など、日本で暮らす私たちは多くの自然災害と隣り合わせに生きています。
災害が起きたとき、「どこに逃げるか」を考えるのはとても大切な行動です。
しかし、実はその前に考えておくべき、もっと重要なことがあります。

それが「どこで生き延びるか」という視点です。
どこに向かうかよりも、その場所でどう生き残るのかを具体的に想定しておくことが、命を守るうえで何よりも欠かせないポイントなのです。

この記事では、「逃げること」と「生き延びること」の違いを整理しながら、実際に命を守るための行動や備えについて考えていきます。

避難場所にたどり着けるとは限らない

災害時、真っ先に思い浮かぶのは「避難所」や「指定された避難場所」かもしれません。
しかし、地震直後は道路が崩れたり、建物の倒壊や火災により移動が困難になることがあります。
大雨や津波の危険がある場合は、そもそも外に出ることが命に関わる危険行為になるケースもあります。

また、避難所に着いたとしても、すぐに受け入れ態勢が整っているとは限りません。
人が多すぎて入れない、備蓄が間に合っていない、情報が錯綜して混乱しているといった状況も過去の災害で多く報告されています。
だからこそ、「とにかく避難所に行けばいい」という発想ではなく、自宅や会社、学校など「今いる場所」でどう生き延びるかを常に想定しておく必要があります。

今いる場所を安全に変えるという発想

災害は、必ずしも移動することが正解とは限りません。
たとえば地震であれば、まずは落下物や家具の転倒から身を守れる場所に移動し、揺れが収まるまで待機することが最優先です。
無理に外に出ようとして、崩れた壁やガラス片に巻き込まれるケースは少なくありません。

また、自宅が安全であれば「在宅避難」という選択肢も現実的です。
食料や水、簡易トイレ、ラジオ、ライトなど最低限の備えがあれば、避難所に行かずとも自宅で一定期間を過ごすことが可能です。
特に小さな子どもや高齢者、持病のある家族がいる家庭にとっては、慣れた環境での避難が心身の負担を大きく軽減します。

今いる場所を、危険な場所から「避難できる場所」に変える。
それが、生き延びるための視点のひとつです。

生き延びるための選択肢を複数持っておく

災害時の状況は常に変化します。地震の揺れが収まっても、火災が起きるかもしれません。
大雨で水が引いてきたと思っても、次の雨で再び増水する可能性もあります。
だからこそ、あらかじめ「自宅が使えないときはどうするか」「最寄りの避難所が満員だったらどこへ行くか」といった、複数の選択肢を用意しておくことが重要です。

また、自宅避難・職場待機・車中泊・近隣宅への避難など、「避難の形」は一つではありません。
どこに逃げるかを決めつけるのではなく、その場の状況に応じて「どこでどう生き延びるか」という視点で、柔軟に判断するための準備と知識が求められます。

災害時にもっとも危険なのは、「こうなるはず」という思い込みです。
状況に応じた対応ができるよう、複数のパターンをシミュレーションしておきましょう。

避難行動の基本は「最初の10分」

災害発生直後の10分間は、命を守るうえで極めて重要です。
とくに地震の場合は、揺れが収まってからの初動が生死を分けることになります。
すぐに火元を確認する、ガスの元栓を閉める、倒壊しそうな場所を避ける、スマホやラジオで情報を集める。
そうした一つひとつの判断が、次の安全行動につながります。

そのためには、事前に「何をすべきか」「どこが安全か」を知っておく必要があります。
そしてこの行動は、特定の避難場所へ逃げるためのものではなく、「自分がいる場所で生き延びる」ための行動です。

行動の軸は「移動すること」ではなく、「安全な場所にとどまること」でもいいのです。
必要なのは、どんな状況でも冷静に判断できる力と、すぐに動ける準備です。

まとめ

災害時にとるべき行動は、「どこに逃げるか」ではなく、「どこで生き延びるか」を考えることから始まります。
避難所へ向かうことだけが正解ではありません。
今いる場所の安全を確保する、備えを通じてその場所を避難できる環境にする、そして状況に応じて柔軟に行動できる選択肢を持つことが、本当に命を守る力になります。

生き延びるための備えは、特別な知識や高価なグッズではなく、日々の生活に少しの工夫と意識を加えることから始まります。
今日という平穏な時間こそ、行動を起こすチャンスです。