災害は、いつ、どこで、誰の身に降りかかるかわかりません。
そしてそのとき、集団や地域の中に「備え」や「対応」を導く存在がいなければ、混乱が拡大し、命が失われるリスクが一気に高まります。
だからこそ、防災にはリーダーの存在が必要です。
しかし、「防災リーダーにならなきゃいけないのは自分か」と問われたとき、多くの人が一歩引いてしまうのも事実です。
責任の重さ、専門知識への不安、周囲の視線。たしかに防災の主導役を担うことは、簡単なことではありません。
でも、覚えておいてほしいのは、防災リーダーは「あなたでなくてもいい」ということです。
しかし、誰かがその役を担わなければ、地域も職場も家庭も守れないという現実もまた、見過ごせないのです。
多くの人が「誰かがやってくれるだろう」と思っている間に、重要なことが決まらず、備えが進まず、いざというときに対応できないまま混乱が起こる。
これが、災害時の典型的な失敗パターンです。
防災は、個人の備えと同じくらい「チーム」の動きが大事になります。
避難の呼びかけ、安否確認、物資の管理、情報の共有など、誰かが主導しないと成り立たない行動がたくさんあるからです。
けれど、その「誰か」は、事前に決まっていなければ機能しません。
だからこそ、「自分がやるかどうか」よりも、「誰がやるのか」を明確にしておくことが、何より重要なのです。
防災リーダーというと、豊富な知識や訓練経験を持ったプロを思い浮かべるかもしれません。
しかし、現場で求められるのは、専門家のような完璧な指揮官ではなく、「一歩先に声を出せる人」です。
たとえば、避難所の入り口で「順番に並んでください」と言える人、災害時の連絡体制を提案できる人、ご近所で備蓄の共有を呼びかけられる人。
その小さな行動の積み重ねが、大勢の命を守る土台になります。
防災リーダーは、知識や経験よりも、「やろうとする意思」と「チームを意識できる姿勢」が求められます。
だからこそ、自分で無理をせず、役割を分担しながら「誰が、何をするのか」を決めておくことが現実的な対策なのです。
災害時、突然「誰が指揮をとるか」が決まるわけではありません。
混乱のなかで自然発生的にリーダーが生まれるケースもありますが、普段からの話し合いで役割を決めておけば、対応は格段にスムーズになります。
家庭なら、避難の際に誰が子どもを連れて逃げるのか、誰がペットを連れていくのか。
職場なら、安否確認は誰が担当するのか、非常時の連絡手段は何か。
自治会なら、高齢者のフォローや情報発信の担当をどう振り分けるか。
こうしたことを、日常の中で話し合っておくことが、立派な防災対策になります。
一人に負担を押しつけるのではなく、それぞれができることを引き受ける。
それだけで、防災リーダーは「たった一人の責任」ではなく、「みんなで分担できる行動」になります。
災害で生じるのは、建物の倒壊や火災といった直接的な被害だけではありません。
対応の遅れ、判断の迷い、情報不足によって「本来助かるはずだった命」が失われることも多くあります。
そしてそれは、リーダー不在によって起きる「見えない被害」と言えます。
避難が遅れた、支援物資の管理ができなかった、混乱でトラブルが生まれた。
こうした状況を防ぐためにも、誰かが声を出し、動き始めることが欠かせません。
リーダーになる勇気を持たなくてもいい。
でも、自分ができることで誰かを支える姿勢を持つこと。
それが結果として、強い防災チームを生み出すのです。
防災リーダーは、必ずしもあなたが担う必要はありません。
しかし、誰かがその役割を果たさなければ、備えも、命も守ることができません。
そしてその「誰か」は、自然に生まれるものではなく、日常の中で話し合い、役割を決めておくことによって初めて機能します。
防災は一人ではできません。
だからこそ、リーダーの責任を共有し、役割を分け合うことが、最も現実的で、最も効果的な備えになります。
今日、誰かと「自分たちの防災」を話すきっかけを持ってください。
その一歩が、いざというときの「助かった」を生み出します。