「結局、災害なんて来なかった」「用意しても使わなかった」
そうした声は、防災を続けている人が必ず耳にする意見です。
たしかに、非常食が賞味期限を迎え、使わないまま捨てることもあるかもしれません。
災害用の水を何年も放置して交換し忘れていたという人もいるでしょう。
でも、本当にそれは「無駄」なのでしょうか?
この記事では、備えが役に立たなかったと感じる人に向けて、「備えることの本当の意味」と「何も起きなかった日々」の価値について、わかりやすく解説していきます。
災害が発生し、備えた物資や知識をフル活用する状況は、決して歓迎すべきことではありません。
むしろ、それらを使う必要がなかったという事実こそが、「平穏無事であった」という何よりの成果です。
たとえば、保険に入っていても、事故が起きなければ支払いは発生しません。
でも、入っていたことを無駄とは感じないはずです。
防災も同じです。
使わなかったことは「損」ではなく、「被害がなかった証」として捉えるべきなのです。
日々の中で、何も起きないということが、どれほど価値のあることか。
その尊さに気づければ、備えの意味も見えてくるはずです。
備えが「無駄」に感じられるのは、平常時だからです。
しかし、ひとたび災害が起きれば、その備えの有無が命運を分ける現実が訪れます。
地震、台風、大雨、停電などなど。
これらの災害は、警報が出たときにはもう動けないことも多いのです。
非常食、水、トイレ、情報手段、充電手段……どれも災害時には一瞬で手に入らなくなります。
コンビニやスーパーがすぐに空になる光景を、ニュースなどで見たことがある人も多いでしょう。
「備えておけばよかった」と思っても、そのときにはもう手遅れです。
だからこそ、何も起きていない今のうちに準備しておくことが、最大の安心につながるのです。
「使わなかったらもったいない」という思いは自然なことです。
けれど、その備えは非常時だけでなく、日常にも活用できます。
防災グッズや非常食は、ローリングストックで日常的に使いながら補充することで、ムダを減らすことができます。
災害時の備えは、非常時だけのものではありません。
キャンプ、アウトドア、突然の停電や断水、病気で買い物に行けない日……あらゆる場面で役立ちます。
防災用品があることによって、「いつでも対応できる」という安心感が、日常の暮らしにも余裕をもたらしてくれるのです。
「備えておいてよかった」と思える場面は、災害だけではなく、日々の暮らしのなかにも確かに存在しています。
防災にかけるお金や手間は、今すぐにリターンが見えるものではありません。
しかし、それは将来の自分や家族、地域を守るための投資であり、命に対する備えでもあります。
しかもその投資は、意外と小さな努力で始められます。
ペットボトルの水を2本多く買うこと、電池を少し多めにストックすること、モバイルバッテリーを確認すること。
そうした「たった5分の行動」が、大きな安心につながります。
投資とは「もしもの未来に備えて、今行動すること」です。
防災も同じ。今日の小さな一歩が、災害の中で大きな差になる。
だからこそ、無駄だと感じる前に「未来のため」と考えてみてほしいのです。
防災の最大のゴールは、「何も起きずに無事でいられること」です。
つまり、備えて何も使わなかったとしたら、それはむしろ「防災の成功」と言えます。
過去の災害では、「あのとき備えておけばよかった」と後悔した人が多く存在しました。
反対に、「使わなかったけど備えていて安心だった」と語る人も少なくありません。
備えるという行為は、被害を減らすだけでなく、自分の心を落ち着け、周囲を助ける余裕を生み出します。
だからこそ、「無駄だった」と感じる前に、「それでよかった」と胸を張っていいのです。
何も起きなかったから備えは無駄と思う気持ちは、自然なものです。けれど、備えは使わないからこそ価値があり、役に立たなかったのではなく、役に立つ場面が訪れなかっただけなのです。
防災は、安心をつくる行為であり、未来への信頼を積み重ねることです。
何も起きなかったからこそ、「備えてよかった」と言える毎日を、これからも続けていく。それが、本当の意味での防災の姿です。