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自治会の防災担当が一人で抱え込まないための仕組みづくり

地域の防災力を高めるうえで、自治会の存在は非常に重要です。
しかし、防災担当者にすべての計画や準備が集中してしまうと、負担が過剰になり、継続的な取り組みが困難になるという課題が多くの地域で見られます。
真に強い防災体制をつくるためには、「一人で背負わない仕組み」が必要です。

この記事では、防災担当者が孤立せず、地域全体で支え合うための具体的な仕組みづくりのポイントを、わかりやすく解説していきます。

担当制から「チーム制」への切り替えが第一歩

防災活動が一部の熱心な個人に依存している状態では、担当者の交代や体調不良などで取り組み自体が止まってしまうリスクがあります。
そのため、まずは「防災担当者一人がすべてを担う」体制から、「複数人で分担するチーム制」への移行が必要です。

具体的には、避難誘導、安否確認、備蓄管理、広報連絡、福祉支援などの分野ごとに小さな役割をつくり、複数の住民で担う体制を整えることが有効です。
1人が100の責任を抱えるのではなく、10人で10ずつ分ける形にすることで、負担も軽減され、継続性も生まれます。

役割が明確になれば、新たな参加者も自分の担当が見えやすくなり、「何をしていいかわからない」という不安も解消されます。

防災の「見える化」で協力を促す

防災活動の中身が見えにくいと、住民は「何をやっているのかわからない」「関係ないことだ」と感じがちです。
そこで重要なのが、防災に関する情報を地域で見える形にすることです。

たとえば、地域の掲示板や自治会だより、SNS、回覧板などを使って、防災活動の進捗や訓練の予定、参加者の声などを定期的に発信することで、関心のない人にも防災が「身近なこと」だと伝わります。

さらに、「〇〇さんが避難所運営の担当です」「△△さんが備蓄の管理をしています」と顔が見える仕組みにすれば、「自分も少しなら手伝ってみようかな」という共感や協力が生まれやすくなります。

「お願い」ではなく「できることから一緒に」の声かけを

住民に協力を仰ぐときに、「防災担当をお願いします」といった重い言い方をすると、尻込みされてしまうこともあります。
そこで大切なのは、「できることから一緒にやってみませんか」という柔らかい声かけです。

たとえば、「防災訓練のチラシを配るだけでOK」「備蓄チェックリストを一緒に見直してみませんか」など、具体的で小さな協力を提案することで、参加のハードルを下げられます。

協力が少しでも生まれれば、防災担当者の心理的な負担も軽減されますし、関わった住民にとっても「地域の一員として何かできた」という実感が残ります。
小さな参加の積み重ねが、大きなつながりを生むのです。

防災活動に「楽しさ」と「交流」を加える工夫

防災活動が「まじめすぎる」「難しそう」という印象を持たれてしまうと、関わる人は限られてしまいます。
そこで、活動に少しだけ「楽しさ」や「交流の要素」を取り入れる工夫が効果的です。

たとえば、子ども向けに「防災スタンプラリー」や「防災クイズ大会」を開催したり、高齢者向けに「懐かしい非常食を味わう会」などを実施することで、地域の幅広い層が自然と集まれる場ができます。

こうしたイベントを通じて防災を身近に感じてもらうことで、防災担当者の孤立を防ぎ、共に考える仲間が少しずつ増えていきます。

防災は「生き延びる技術」であり「地域の未来づくり」

防災は単に避難訓練や備蓄にとどまるものではありません。
それは、「この地域で、誰一人取り残されずに生き延びるための技術」であり、「安心して暮らし続けるための土台」をつくる活動です。

だからこそ、一部の人だけが背負うのではなく、地域全体で共有すべきテーマです。
「どこに逃げるか」だけでなく、「どう助け合って生き延びるか」を考えることが、自治会の防災に求められています。

防災担当者が動きやすい仕組みをつくることは、地域全体の命を守る仕組みをつくることにつながります。

まとめ

自治会の防災担当者が一人で抱え込まないためには、役割の分担と参加のハードルを下げる工夫が必要です。
情報を見える形にし、参加のきっかけを小さく用意し、楽しさや交流を取り入れた活動を展開することで、防災は「一部の人の仕事」から「みんなのテーマ」へと変わっていきます。

防災担当者を孤立させないこと。
それが、地域の防災力を高め、災害時に真に機能する体制を築くカギになります。