企業の防災対策において、防災担当者の存在は非常に重要です。
しかし、担当者だけが知識や計画を理解していても、実際の災害時には十分に機能しません。
全社員が必要な情報を共有し、いざというときに即座に動ける状態にしておかなければ、命や事業継続を守ることは難しいのです。
この記事では、防災担当者だけにとどめず、全社員に必ず伝えるべき3つの重要なポイントについて、わかりやすく解説していきます。
災害時、まず最優先すべきは「自分の命を守る行動」です。
防災担当者の指示を待っている余裕はありません。
社員一人ひとりが、どのように初動対応を取るべきかを理解しているかどうかが、生死を分ける大きなポイントになります。
例えば、大地震の発生時には机の下にもぐり、揺れが収まるまで頭を守る。
火災が発生したら、煙を避けながら低い姿勢で避難する。
津波の危険がある場合は、すぐに高台へ向かう。
こうした基本行動は、誰もが即座にとれるよう訓練しておくべきです。
「指示が来るまで動かない」ではなく、「自分で判断して動ける」ことが、全社員に求められる防災スキルです。
会社には、建物の構造や事業内容に応じた独自の防災ルールがあるはずです。
避難経路、非常口の場所、集合場所、安否確認の方法、使用禁止のエレベーター、危険区域など、それぞれのオフィスごとに特有のポイントがあります。
この情報を防災担当者だけが知っていても意味がありません。
全社員が正しく理解し、頭に入れておかなければ、混乱や危険行動を招く可能性があります。
定期的な避難訓練に参加するだけでなく、入社時研修や定期的なリマインドを通じて、自然と身につける仕組みをつくることが重要です。
「自分の働く場所では何をするべきか」を、常に意識できるようにしておきましょう。
災害発生直後だけでなく、その後の行動もまた重要です。
特に企業では、災害後の安否確認、連絡体制、応急対応、事業継続の判断など、多くの作業が発生します。
誰が安否確認を集約するのか、誰が設備の安全確認を担当するのか、誰が外部と連絡を取るのか。
こうした役割分担を事前に明確にしておき、社員一人ひとりに「自分が災害後に何をすべきか」を伝えておく必要があります。
また、帰宅困難を想定し、会社に留まるための備えやルールも全社員に理解させておくことが重要です。
災害後に無理な帰宅を試みることは二次災害につながりかねません。
全員が「次に何をするべきか」を把握していれば、混乱を最小限に抑え、迅速な復旧へとつなげることができます。
災害時に求められるのは、単なる避難ではありません。
自分の命を守り、周囲と協力しながら生き延びるための判断力と行動力が問われます。
会社が指定する避難場所に向かうことだけが正解ではなく、建物の被害状況や外部のリスクに応じて、その場にとどまる判断が必要な場合もあります。
どんな状況でも「最も安全な行動を取る」という視点を持ち、社員一人ひとりが主体的に考え動けるようにすることが、これからの企業防災に欠かせません。
防災担当者だけが防災を理解していても、企業全体の命と事業は守れません。
全社員に対して、「初動行動」「独自ルールと避難ルート」「災害後の役割」という三つの柱を確実に伝え、浸透させることが、強い防災体制をつくる鍵になります。
いざというときに動ける企業とは、全員が「命を守るために何をするか」を理解し、自分の役割を果たせる企業です。
今日から、防災情報を全社員に共有する取り組みを始めてみましょう。