地震や豪雨などの自然災害は、私たちの日常に突然襲いかかります。
その瞬間、すぐに手を差し伸べてくれるのは、もしかすると隣に住む誰かかもしれません。
公的な支援が届くまでに時間がかかる中、近くに住む人同士の助け合い、つまり「ご近所力」が生死を分ける決定的な力になります。
この記事では、災害時にご近所との関係がなぜ重要なのか、そして顔の見える関係をつくるために日頃からできる具体的な取り組みを紹介していきます。
「ご近所力」とは、地域住民同士のつながりや信頼関係が生み出す助け合いの力のことを指します。
これは災害時に限らず、日常の暮らしの中でも発揮されますが、特に災害時にはその真価が問われます。
家族が離れている時間帯に災害が起きた場合、最初に安否を確認し、必要な支援をしてくれるのは、すぐ隣に住む人かもしれません。
また、高齢者や障がいのある方、小さな子どもがいる家庭にとっては、日常的な関係性の中で「いざという時に頼れる人」がいることが、何よりの安心につながります。
行政の支援は限られた人手と時間の中で動きます。
その前段階で「自分たちで助け合う」体制を築いておくことが、ご近所力の核心です。
災害が起きてからでは、初めて顔を合わせる相手に声をかけるのは難しいものです。
だからこそ、平常時からの関係づくりが欠かせません。
たとえば、あいさつを交わす、ゴミ出しの際に少し会話する、町内清掃に参加するなど、ほんの小さな行動がきっかけになります。
特別な交流を無理に設ける必要はありません。
日々の生活の中で、顔と名前が一致する人が一人、また一人と増えていくだけで、防災の体制は強くなります。
マンションや集合住宅では、定期的な住民会や掲示板の活用を通して、防災に関する情報を共有し合うと効果的です。
災害時の連絡手段や集合場所を確認しておくことも、顔の見える関係の延長線上にあります。
災害時に共助が機能するには、「この人なら助けてくれるだろう」「困ったときは声をかけてもいい」という信頼感が必要です。
その信頼は、一度の訓練やイベントでは生まれません。
たとえば、子どもが地域で遊ぶ際に声をかけてもらったり、年配の方が荷物を運ぶのを手伝ってもらったりといった日常のやりとりが、無意識のうちに“安心のネットワーク”をつくっています。
こうした下地があるからこそ、非常時にも自然なかたちで助け合いが生まれるのです。
防災のためだけにご近所付き合いをするのではなく、日常の暮らしの中に自然と「気にかける」気持ちを取り入れる。それが結果として災害時の強さになります。
顔の見える関係を育てるために、すぐにできることはたくさんあります。
このような行動は、負担になるような大きなことではありません。
むしろ、日々の暮らしにほんの少し加えるだけで、ご近所力は着実に育ちます。
また、災害時に助け合う「共助メンバー」を事前に話し合っておくことで、いざという時の安心感も違います。
災害が発生した瞬間、一番近くにいる人こそがあなたの命を支える存在になるかもしれません。
そして、あなた自身も、誰かの命を守る存在になるかもしれません。
その時に必要なのは、特別なスキルや道具ではなく、日頃から築いてきた「ご近所とのつながり」です。
あいさつから始まる小さな関係づくりが、大きな安心につながります。
ご近所力は一人では育ちません。地域全体で育てていくものです。
今日からできる小さな行動で、顔の見える関係を増やし、災害に強い地域を一緒につくっていきましょう。