大鯰は暴れない
とある地方の川に、巨大なナマズが住んでいた。
そのナマズは、川の底で眠り続けていたが、時折暴れ出して、川を揺るがせるという言い伝えがあった。
ある日、そのナマズが暴れ出した。
川面は激しく揺れ、魚や鳥は逃げ惑った。
人々は、地震が来ると恐れて、家から避難した。
しかし、地震は来なかった。ナマズは暴れ続けたが、川は揺れにとどまった。
人々は、ナマズが暴れても地震が来ない理由を不思議に思った。
その夜、一人の漁師が、川のほとりでナマズを見かけた。
ナマズは、大きな目で漁師を見つめていた。
漁師は、ナマズに声をかけた。
「なぜ、暴れているんだ?」
ナマズは、ゆっくりと口を開いた。
「私は、この川を守るために暴れているんだ」
「川を守る?」
「この川は、私の住み家だ。地震が来て、川が壊れないように、私は暴れているんだ」
漁師は、ナマズの言うことに驚いた。
「でも、地震は来なかったよ」
「私は、地震を止めるためにも暴れているんだ」
「地震を止めるって?」
「地震は、地下の岩がぶつかって起こる。私は、そのぶつかりを防ぐために、川の底で力を込めているんだ」
漁師は、ナマズの話を聞いて、感動した。
「ありがとう、ナマズさん。あなたは、この川の守り神なんだ」
ナマズは、漁師に微笑みかけた。
「私は、この川を守るために、これからも暴れ続けるよ」
ナマズは、川の底に潜り、再び眠りについた。
それからというもの、川には地震が来ることはなくなった。
人々は、ナマズを「大鯰」と呼んで、大切に守り続けた。
おわり
この小説はフィクションです。実在の人物や団体とは関係ありません。