災害対策というと、まず非常持ち出し袋や食料の備蓄が思い浮かびますが、それだけでは十分とは言えません。
実は、同じマンションに住んでいても、住んでいる階数によって備えるべきリスクや対策は大きく異なります。
この記事では、マンションの1階と最上階で異なる災害リスクを見直し、それぞれに必要な備えについて詳しく解説します。
マンション居住者が今からできる実践的な備えのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
マンションの1階部分は、地震や火災よりもむしろ水害への備えが重要です。
近年、短時間に集中して降る雨や台風によって、下水が逆流したり、道路が冠水したりするケースが急増しています。
特にハザードマップで「浸水想定区域」に指定されている地域では、1階部分が最も大きな影響を受けやすいです。
このようなリスクに備えるためには、まず玄関や窓に止水板や水のうなどを備えることが効果的です。
また、重要書類や電子機器、写真などの水に弱いものは、できるだけ高い位置に保管しておきましょう。
さらに、1階の住人は、避難が遅れた際に上階への「垂直避難」が必要になる場面もあります。
日頃から階段の位置や、屋上や共用廊下へのルートを確認し、非常時にどこへ逃げるのかを家族で共有しておくことが重要です。
一方、マンションの最上階に住む人は、水害の直接的な影響を受けることは少ないかもしれません。
しかし、高層階特有の災害リスクは、決して見逃せないものです。
その代表が「エレベーター停止」と「断水・停電」です。
大地震などの災害時には、エレベーターは自動的に緊急停止します。
復旧には数日かかることもあるため、日常生活が一気に不便になるだけでなく、外出そのものが困難になる可能性もあります。
特に高齢者や体力に自信のない方は、階段の昇降が大きな負担になります。
また、停電や断水が発生すると、高層階では水が届かなくなったり、トイレが使用できなくなったりする場合があります。
そのため、最上階に住んでいる人は、数日間自宅で生活できるだけの水や食料、簡易トイレを多めに備えておくことが求められます。
さらに、マンションの屋上に設備機器がある場合は、地震の揺れで機器が落下する危険性もあります。
自宅に接している屋上の安全性についても、事前に確認しておくことが大切です。
階数に関わらず、すべてのマンション住人に共通する備えも忘れてはいけません。
例えば、非常用持ち出し袋は、玄関や寝室などすぐに手が届く場所に準備しておくべきです。
また、懐中電灯、モバイルバッテリー、携帯ラジオなどの停電時に必要な道具も、各階の居住者にとって欠かせないアイテムです。
マンションの防災ルールや避難経路も、日頃から確認しておく必要があります。
エレベーターが使用できないことを前提に、階段の位置や避難通路の障害物の有無をチェックし、災害時に迷わず行動できるよう備えておきましょう。
さらに、マンション全体での防災訓練や情報共有も、被害を減らすうえで非常に有効です。
防災委員会などがあれば積極的に参加し、非常時の役割分担や連携の確認を行っておくことで、住民全体の防災力が高まります。
マンションに住んでいるからといって、すべての家庭が同じ災害リスクを抱えているわけではありません。
1階と最上階では、直面する危険が大きく異なるため、それぞれに応じた対策を講じることが欠かせません。
水害、停電、エレベーターの停止、生活インフラの遮断など、あらゆるリスクを想定して、「自分の住む階だからこそ必要な備え」を今一度見直してみましょう。
一人ひとりの備えが、家族の安全、そしてマンション全体の防災力を支える力になります。
階層に応じた視点で、災害に強い住まい方を選びましょう。