中小企業の防災対策② ハザードマップを理解する

防災基本計画

防災基本計画とは、災害対策基本法に基づいて、国、地方公共団体、事業者、住民が一体となって、災害の発生を未然に防いだり、被害を最小限に抑えたりするための基本的な方針を定めた計画です。

防災基本計画は、次の3つの基本理念に基づいています。

・人命の尊重
・国民生活の継続
・国土の保全

防災基本計画には、次の4つの施策が定められています。

・災害の予防
・災害時の応急対策
・災害復旧・復興
・防災に関する科学技術及び研究の振興

防災基本計画は、2006年に策定された第1期計画から、2011年の東日本大震災を踏まえて2014年に策定された第2期計画、2023年の改訂を経て、現在は第3期計画が施行されています。

第3期計画は、2023年から2032年までの10年間を計画期間としています。

防災基本計画は、国民一人ひとりが防災に取り組むための指針となる重要な計画です。
防災基本計画を理解し、防災に取り組むことで、災害から身を守ることができます。

以下に、防災基本計画の概要について、詳しく説明します。

災害の予防

災害の予防には、次の施策が定められています。

・地震、津波、風水害、火山災害、雪害などの自然災害の発生を未然に防ぐための対策
・大規模な火災や事故などの人為災害の発生を未然に防ぐための対策
・災害に強い社会の構築のための対策

災害時の応急対策

災害が発生した場合に、次の施策が定められています。

・被災者の救助、避難、救護
・被災者の生活の支援
・被災した地域の復旧

災害復旧・復興

災害が終息した後には、次の施策が定められています。

・被災した地域の復旧
・被災した地域の復興
・災害に強い社会の構築

防災に関する科学技術及び研究の振興

新しい防災技術の開発や、防災に関する研究の推進を図るための施策が定められています。

防災基本計画は、我が国の防災対策の根幹をなす計画です。
この計画に基づいて、国、地方公共団体、事業者、住民が一体となって防災対策を推進することで、災害から人命と財産を守り、国民の安全・安心を図ることができます。

内閣府 防災計画
https://www.bousai.go.jp/taisaku/keikaku/index.html

その中で、防災基本計画では、特に重点を置くべき事項として、以下のとおり定めています。

出典:中央防災会議 防災基本計画(令和4年6月)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000650514.pdf

第5章 防災業務計画及び地域防災計画において重点を置くべき事項

○平成 23 年3月に発生した東日本大震災は、多くの課題と教訓を遺した。
この教訓を踏まえ、近い将来発生が懸念される南海トラフ地震等の大規模災害の発生に備え、更なる防災対策の充実を図ることが必要である。
この際、可能な範囲内で災害対応業務のプログラム化、標準化を進めることや、防災の各分野における訓練・研修等による人材育成を図ることも必要である。

○また、一つの災害が他の災害を誘発し、それぞれが原因となり、あるいは結果となって全体としての災害を大きくすることを意識し、より厳しい事態を想定した対策を講じなければならない。

○以上の観点を踏まえつつ、当面、防災業務計画及び地域防災計画において、特に重点を置くべき事項は以下の通りとする。

1 大規模広域災害への即応力の強化に関する事項
大規模広域災害にも対応し得る即応体制を充実・強化するため、災害時における積極的な情報の収集・伝達・共有体制の強化や、国と地方公共団体間及び地方公共団体間の相互支援体制を構築すること。
また、国及び地方公共団体と企業等との間で協定を締結するなど、各主体が連携した応急体制の整備に努めること。
また、相互支援体制や連携体制の整備に当たっては、実効性の確保に留意すること。

2 被災地への物資の円滑な供給に関する事項
被災地への物資の円滑な供給のため、被災地のニーズを可能な限り把握するとともに、ニーズの把握や被災地側からの要請が困難な場合には、要請を待たずに必要な物資を送り込むなど、被災地に救援物資を確実に供給する仕組みを構築すること。

第3節 防災計画以外の計画との整合性の確保等

3 住民等の円滑かつ安全な避難等に関する事項
住民等の円滑かつ安全な避難を確保するため、ハザードマップの作成、避難指示等の判断基準等の明確化、緊急時の避難場所の指定及び周知徹底、立退き指示等に加えての必要に応じた「緊急安全確保」の指示、避難行動要支援者名簿及び個別避難計画の作成及び活用を図ること。

4 被災者の避難生活や生活再建に対するきめ細やかな支援に関する事項
被災者に対して避難生活から生活再建に至るまで必要な支援を適切に提供するため、被災者が一定期間滞在する指定避難所の指定、周知徹底及び生活環境の確保、被災者に対する円滑な支援に必要な罹災証明書の発行体制の整備、積極的な被災者台帳の作成及び活用を図ること。

5 事業者や住民等との連携に関する事項
関係機関が一体となった防災対策を推進するため、市町村地域防災計画への地区防災計画の位置付けなどによる市町村と地区居住者等との連携強化、災害応急対策に係る事業者等との連携強化を図ること。

6 大規模災害からの円滑かつ迅速な復興に関する事項
大規模災害からの円滑かつ迅速な復興のため、地方公共団体は、復興計画の作成等により、住民の意向を尊重しつつ、計画的な復興を図ること。

7 津波災害対策の充実に関する事項
津波災害対策の検討に当たっては、以下の二つのレベルの津波を想定することを基本とすること。
・発生頻度は低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波
・最大クラスの津波に比べて発生頻度が高く,津波高は低いものの大きな被害をもたらす津波
また、津波からの迅速かつ確実な避難を実現するため、住民の津波避難計画の作成、海岸保全施設等の整備、津波避難ビル等の避難場所や避難路等の整備、津波浸水想定を踏まえた土地利用等ハード・ソフトの施策を柔軟に組み合わせて総動員する「多重防御」による地域づくりを推進すること。

8 原子力災害対策の充実に関する事項
原子力災害対策の充実を図るため、原子力災害対策指針を踏まえつつ、緊急事態における原子力施設周辺の住民等に対する放射線の重篤な確定的影響を回避し又は最小化するため、及び確率的影響のリスクを低減するための防護措置を確実に行うこと。

この赤字の部分、「3 住民等の円滑かつ安全な避難等に関する事項」において、ハザードマップの作成及び活用が求められています。

ハザードマップ

ハザードマップとは、自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したものです。
防災マップ、被害予測図、被害想定図、アボイドマップ、リスクマップなどの名称で作成されている場合もあります。

ハザードマップは、自然災害の発生時に、人々の安全を守るために重要な役割を果たします。
ハザードマップを見ることで、自分の住んでいる地域が、どの災害のリスクにさらされているかを知ることができます。
また、ハザードマップには、避難場所や避難経路が記載されている場合もあります。

ハザードマップは、市町村や都道府県が作成しています。
ハザードマップは、インターネットで公開されている場合や、市役所や役場などで配布されている場合があります。

国土交通省・ハザードマップポータルサイト
https://disaportal.gsi.go.jp/

ハザードマップを活用することで、自然災害のリスクを減らすことができます。
ハザードマップを見ながら、自分の住んでいる地域の防災対策を検討しましょう。

ハザードマップの種類

ハザードマップには、いくつかの種類があります。

・洪水ハザードマップ
・土砂災害ハザードマップ
・津波ハザードマップ
・地震ハザードマップ
・火山ハザードマップ

それぞれのハザードマップには、その災害の特徴に合わせて、被害範囲が色分けされています。

ハザードマップの活用方法

ハザードマップは、自然災害の発生時に、人々の安全を守るために重要な役割を果たします。
ハザードマップを見ることで、企業の所在地の地域が、どの災害のリスクにさらされているかを知ることができます。
また、ハザードマップには、避難場所や避難経路が記載されている場合もあります。

ハザードマップは、以下のような方法で活用することができます。

・自分の住んでいる地域の災害リスクを知る
・企業の所在地の災害リスクを知る
・企業が新たに用地を取得する、あるいは事業所を開設するような場合、その検討材料にする
・避難場所や避難経路を確認する
・防災対策を検討する
・ハザードマップを地域住民に周知する

ハザードマップ利用時の注意点

「安全」な場所を確認する地図ではありません。
自宅や会社の周りに色が付いていないから安全とは限りません。

「危険」な場所を把握する地図です。
自宅や会社の周りに色が付いている場合は100%危険と認識してください。

まとめ

実際には、想定していない災害が発生してハザードマップの被害を超える事態も起こる可能性もあり得ますので、それに備えた準備をしておくことが必要です。

ハザードマップは、自然災害のリスクを減らすために重要なツールです。
ハザードマップを活用して、安全な暮らしを守りましょう。