津波の予言者
北海道のとある漁村に住む山田さんは、津波の予言者として有名だった。彼は、津波が来る前に必ず夢を見るという特別な能力を持っていた。彼は、その夢の中で津波の規模や時間や場所を知ることができた。彼は、その夢を見たらすぐに村の人々に知らせて避難を促すことにしていた。彼のおかげで、村は何度も津波の被害から免れた。村の人々は、彼を敬愛し、神の使いだと呼んだ。
ある日、山田さんはまた夢を見た。しかし、今回の夢は違っていた。彼は、自分が海岸に立っているところから夢が始まった。彼は、海を見ると驚いた。海面が異常に引いていて、海底が見えていた。彼は、これは津波の前触れだと分かった。彼は、すぐに村に戻って警告しなければならないと思った。しかし、その時、彼の背後から声がした。
「山田さん、こんにちは」
彼は振り返ると、自分より少し年下の男性が立っているのを見た。彼はその男性を見て驚いた。その男性は、自分が小学校の時に一緒だった同級生だった。しかし、その同級生は10年前に交通事故で亡くなっていた。
「あなたは・・・」
「そうだよ、僕だよ。久しぶりだね」
「でも、あなたは死んだはずじゃ・・・」
「死んだよ。でも、今日は特別に会いに来たんだ」
「会いに来た?何の用事があるんだ?」
「君に話したいことがあるんだよ。君の能力についてだ」
「能力?津波の予言をする能力のことか?」
「そうだよ。君はどうしてその能力を持っているか知ってるか?」
「知らないよ。生まれつきだと思ってた」
「違うよ。君はその能力を与えられたんだよ」
「与えられた?誰に?」
「僕によ」
「えっ?どういうことだ?」
「僕は死んだ後も君のことを見守ってきたんだよ。君が津波で苦しむ姿を見て心配してたんだ。だから、僕は君に津波の予言をする能力を与えたんだよ」
「そんなことができるのか?」
「できるよ。僕は死後に神様から特別な力をもらったんだよ。でも、その力には条件があったんだ」
「条件?何だ?」
「君に能力を与える代わりに、僕は君の命を奪わなければならなかったんだ」
「何?!」
「そうなんだよ。君が津波の予言をする度に、君の寿命が縮まっていったんだよ。僕は君の命を少しずつ吸い取ってきたんだ」
「そんな・・・」
「今日が最後だよ。君の命はもう尽きたんだ。だから、僕は君に会いに来たんだよ。君に別れを告げるためにね」
「嘘だろ・・・」
「嘘じゃないよ。僕は君が好きだったんだよ。君と一緒にいたかったんだよ。でも、僕は死んじゃったんだ。だから、せめて君の命を奪って、僕と一緒になろうと思ったんだ」
「それは愛じゃないよ。それは狂気だよ」
「違うよ。これが本当の愛なんだよ。君も僕を愛してくれるよね?」
「愛してないよ。こんなことをする人なんか愛せないよ」
「そう言わないでよ。僕は君のことを思ってやったんだよ。君は感謝しなきゃいけないよ」
「感謝なんかしないよ。こんなことをされて感謝できるわけないよ」
「じゃあ、どうするつもりだ?今から津波が来るぞ。君は村に戻って避難するのか?それとも、僕と一緒に死ぬのか?」
「村に戻るに決まってるだろ!」
「無駄だよ。もう遅いよ。津波はもうすぐ来るよ。君は逃げられないよ」
「そんな・・・」
山田さんは海を見ると、巨大な波が迫ってくるのを見た。彼は恐怖に震えた。
「どうした?怖いのか?」
「助けてくれ・・・」
「助けてあげるよ。僕と一緒に来てよ」
「離してくれ・・・」
「離さないよ。僕は君を離さないよ」
男性は山田さんを抱きしめた。山田さんは必死に抵抗したが、男性の力には敵わなかった。
「さあ、行こうよ。僕と一緒に天国へ行こうよ」
男性は笑った。山田さんは泣いた。
そして、津波が二人を飲み込んだ。
おわり
この小説はフィクションです。実在の人物や団体とは関係ありません。