ゾンビになった最初の夢は何を見るのか・・・

ゾンビになった最初の夢は何を見るのか・・・

北極の氷が解け、そこに眠っていたゾンビウィルスが全世界に拡散してから3年後。

日本でもゾンビパンデミックとなり、私は妻と娘と数人の友人たちと、襲ってくるゾンビの群れから逃げていた。

だが、ある日、妻を守るためにゾンビに噛まれてしまった。

そのことを黙って安全地帯まで逃げ延びたが、友人に噛まれているのが見つかった。

すぐに動けないように縛られてすぐに、体が熱くなり、さらに意識が朦朧としてきた。

もうすぐゾンビになると思うと、妻や娘の今後を心配しながら眠りについた。

 

私は夢の中で、自分がゾンビになっていない頃の日常を思い出した。

仕事や趣味、友人や家族との楽しい時間。幸せだったあの頃。

しかし、夢は次第に悪夢に変わっていった。

ゾンビウィルスが発生した日。テレビやネットで恐ろしい映像やニュースを見た日。

政府や自衛隊が対策を打つものの、効果はなく、次々と人々がゾンビ化していく日。

自分たちも避難所まで車や徒歩で逃げ回りながら、生き残るために戦った日。

そして、妻を守るためにゾンビに噛まれてしまった日。

夢の中で私は泣き叫んだ。目を覚ましてくれと。

 

私はゾンビとなって目を覚ました。その瞬間、視界が真っ暗になった。

避難した場所にゾンビ殲滅のために自衛隊がやってきて、銃で頭を打たれたのだ。

妻と娘の声がかすかに聞こえたが、タカシには伝わらなかった。

彼はただ、無意識に動く肉体となってしまった。

それが彼の最初で最後の夢だった。

 

おわり

この小説はフィクションです。実在の人物や団体とは関係ありません。