防災は騙される

防災は騙される

ある日、田中は友人の佐藤から、防災講座のパンフレットをもらった。

佐藤は、田中が防災にあまり関心がないことを知っていたので、何かきっかけになればと勧めてくれたのだ。

田中はパンフレットを眺めて、ふと疑問に思った。

「防災って、本当に必要なのか?」

田中は、生まれてから大きな災害を経験したことがなかった。

もちろん、テレビや新聞で災害のニュースは見ていたし、防災の知識は多少あった。しかし、それらはあくまでも机上の知識で、現実感はなかった。

田中は、防災講座に参加することにした。

講座では、地震や津波、火災などの災害について、具体的な対策方法が説明された。田中は、講師の話を聞いて、初めて防災の重要性を実感した。

「やっぱり、防災は必要だな」

田中は、帰宅後、早速防災対策に取り組み始めた。

まず、家具やガラスの転倒防止対策を行った。

また、非常食や飲料水、懐中電灯などの備蓄も始めた。さらに、家族で避難経路や連絡方法を決めた。

防災対策を進めるうちに、田中は、防災についてもっと知りたいと思うようになった。そこで、防災に関する本やサイトを調べるようになった。

田中は、防災について調べれば調べるほど、防災の難しさを実感した。

災害は、いつどこで起こるかわからない。また、災害の被害は、想定を超えることもある。

「防災なんて、どうせ騙されるんでしょ?」

田中は、そんな風に思うようになった。

ある日、田中は、地震の揺れを感じた。

田中は、すぐに家具の下敷きから逃げ出し、避難場所に避難した。

避難場所で、田中は、同じマンションに住む老夫婦と話をした。

老夫婦は、田中が防災対策をしていることを知り、感謝の言葉をくれた。

「私たちは、もう歳だから、防災なんて無理だと思っていました。でも、あなたのおかげで、少し安心できました」

老夫婦の言葉を聞いて、田中は、防災の大切さを改めて実感した。

「防災は騙されるんじゃない。防災は、自分や家族の命を守るためのものなんだ」

田中は、そう決意した。

 

おわり

この小説はフィクションです。実在の人物や団体とは関係ありません。