「備えあれば憂いなし」という言葉があるように、災害や緊急事態に備えることは重要だとされています。
しかし、現代社会の中で忙しい日々を過ごしていると、防災や非常時への備えを後回しにしてしまう人も少なくありません。
果たして「備えないこと」は本当に悪なのでしょうか?
今回は、備えの重要性やそれに対する多様な視点を踏まえながら、この問いに向き合ってみます。
まずは、備えの重要性について考えてみましょう。
災害や緊急事態は予測できないものです。
地震や台風、大雨、停電など、突然の出来事が私たちの生活を大きく揺るがすことがあります。
そのため、万が一の時に備えて、非常用持ち出し袋を用意したり、避難経路を確認しておくことは、多くの人が推奨しています。
備えを怠ることは、非常時に大きなリスクを抱えることになります。
例えば、地震が発生したとき、家族と避難場所を確認していなかったために混乱が生じたり、非常食を備えていなかったために数日間食糧に困ったりする可能性があるのです。
備えないことが悪とされがちな背景には、社会の防災意識の高まりがあります。
特に日本は地震や台風が多く、自然災害のリスクが高い地域です。
そのため、国や自治体も防災意識の向上を呼びかけ、個々人にも自分自身の安全を守るための備えを求めています。
また、備えを怠ることで、緊急時に他者に迷惑をかける可能性もあります。
例えば、災害時に備蓄をしていなかったために支援物資に頼らざるを得ない状況が生じると、限られた資源を他者と分け合う必要が出てきます。
このような状況では、自己責任という視点から、備えないことが「悪」と見なされることもあるでしょう。
一方で、備えることを強制することにも問題があります。
備えることができる環境や経済的な余裕がない人々に対して、一律に「備えなければならない」とするのは不公平です。
災害対策にはコストがかかり、非常食や防災グッズを揃えることは、決して簡単なことではありません。
また、備えの押し付けが過度になると、逆に人々にストレスやプレッシャーを与えることもあります。
「備えなければいけない」という強い圧力がかかると、心の負担になり、日常生活に悪影響を及ぼす可能性もあるのです。
備えないことには、さまざまな理由があります。
例えば、「今まで何もなかったから大丈夫だろう」という過去の経験に基づく楽観的な考えや、日々の生活に追われて防災について考える余裕がないという現実的な問題です。
また、災害リスクの低い地域に住んでいる人にとっては、備える必要性が薄いと感じることもあるでしょう。
備えないことを選ぶことが必ずしも無責任であるとは限りません。
リスクをしっかりと理解した上で、自分なりに判断を下すことは一つの選択肢です。
とはいえ、備えをしておくことで得られる安心感は大きいものです。
実際に災害や緊急事態が発生した際、事前に準備をしていた人は、そうでない人に比べて冷静に対処できるケースが多く報告されています。
備えをしておくことで、家族や自分自身の命を守ることができる可能性が高まります。
さらに、備えをしていることで他者に迷惑をかけるリスクを減らすことができます。
自分自身がしっかりと備えていることで、他者に対する依存度を下げ、災害時のコミュニティ全体の負担を軽減することにもつながるのです。
「備えないことは悪なのか?」という問いに対して、必ずしも一律に「悪」と言い切ることはできません。
備えないことには個々の事情や考え方があり、社会や経済的な背景も影響しています。
しかし、備えておくことで得られる安心感や、自分や家族、周囲の人々を守る力が大きいことも事実です。
防災意識を高め、無理なくできる範囲で備えることが、結果的に大きな安心をもたらす鍵となるでしょう。